小児歯科学雑誌
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総説
口腔バイオフィルム形成におけるStreptococcus mutansのグルタミン膜輸送体の機能解析
森川 優子
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2022 年 60 巻 1 号 p. 8-13

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抄録

グラム陽性細菌Streptococcus mutansは,ヒト齲蝕の主要な病原性細菌であり,口腔内のバイオフィルム形成において重要な役割を担うことが知られている。この菌の細胞膜には,多くの膜輸送体が存在し,物質の取り込みに関与し,この菌の生育に大きく関与している。口腔内においてS. mutansは温度変化,pH変化,栄養状態,および外来物質の侵入などのストレスに晒されている。膜輸送体はこのようなさまざまな環境の変化に曝露される際に,環境変化によるストレスに応答するために機能することが報告されている。グラム陽性細菌にとって,窒素は生育に必要な栄養素であり,窒素源であるグルタミンの取り込みは細菌の生理機能にとって重要な役割を果たしているといえる。本研究では,S. mutansにおける グルタミン膜輸送体(GlnP)の機能について検討した。

S.mutansのGlnP欠失株および相補株を用いて増殖速度を調べたところ,欠失株にのみグルタミンの影響は認められなかった。また蛍光プローブによる細胞膜輸送の解析において欠失株の蛍光偏光度は有意に低下しており,GlnPが膜輸送体であることが示された。さらに欠失株のバイオフィルム構造は粗造であり,密度は粗であった。

以上の結果より,GlnPは膜輸送体の1つであり菌の増殖,菌体内へのグルタミン輸送に関与し,バイオフィルム形成に重要な役割を果たすことが示された。

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© 2022 日本小児歯科学会
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