小児歯科学雑誌
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原著
上顎第三大臼歯の形態や形成のエックス線学的調査と成人期における実態調査
枡富 由佳子邉見 蓉子枡富 健二
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2022 年 60 巻 2 号 p. 45-53

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抄録

上顎第三大臼歯は,下顎第三大臼歯に比して抜歯選択のほかに臨床的活用範囲が広いと考える。今回,パノラマエックス線写真とCT画像を用いて上顎第三大臼歯の形成時期および形態評価,存在位置について調査を行った。併せて,年齢ごとの保存率と患者の認識についての調査を行った。

第三大臼歯を1歯でも保有する者のうち約9割に上顎第三大臼歯は存在した。第三大臼歯の存在は年齢とともに減少し,40歳代では69.6%,70歳代は33.5%であった。患者が意図的に保存していると回答した者は5.2%と低い結果であった。

歯根形成は主に19歳から21歳にかけて進み24歳頃に完了し,形成に伴い萌出が進むが,歯根形成完了後でもわずかに3.1%しか咬合平面に達していなかった。また,CT画像から歯根形成終了後に歯軸が遠心傾斜しているものは25.7%,近心傾斜しているものは23.8%であった。このうち第二大臼歯の歯根吸収を起こすような近心傾斜角の大きいものが2.6%にみられた。

咬頭数は,4咬頭が31.2%,3咬頭が46.2%,それ以外が22.6%であった。

上顎第三大臼歯の特徴を理解したうえで,パノラマエックス線写真および三次元データを活用し,より的確な臨床診断が可能になると考えられた。

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© 2022 日本小児歯科学会
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