小児歯科学雑誌
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総説
タンパク質の翻訳後修飾を応用した骨再生療法の開発
星川 聖良
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2023 年 61 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

間葉系幹細胞は脱落乳歯からの非侵襲的採取も可能であり,再生医療の細胞供給源として注目されている。しかし,臨床応用の際,採取細胞の分化能の差異など不均一性が問題となる。本研究では,歯科領域で多くの疾患が生じる骨に着目し,均一で効率的な再生療法の確立を目的に解析を行った。近年,多発性骨髄腫の治療薬であるプロテアソーム阻害剤の副次的作用として病変部の骨量改善が報告されている。このことから,本研究ではプロテアソーム依存的な骨芽細胞分化シグナル変動に着目した。その中で,骨芽細胞分化に必須の転写因子で歯の発生にも重要なOsterix(Osx/Sp7)に焦点を当て,その調節機構と細胞分化への関与を解折し以下の知見を得た。

1. 低濃度BMP(Bone morphogenetic protein)とプロテアソーム阻害剤同時処理時に相乗的な骨芽細胞分化亢進と翻訳後修飾依存的Osxタンパク質安定化が生じる。

2.ユビキチンプロテアソーム機構の中で,SCFFbw7複合体がOsxのE3リガーゼとして機能する。

3.リン酸化酵素p38が,SCFFbw7とOsxの結合を誘導する。

4. p38選択的阻害剤処理細胞,Fbw7ノックダウン間葉系幹細胞,Fbw7ノックアウトマウス由来骨芽前駆細胞において,Osxタンパク質の蓄積と細胞分化亢進が生じる。

5. Osxノックアウト細胞でp38リン酸化部位不活化Osx変異体を発現させた場合,野生型Osxと比較し,有意な骨芽細胞分化亢進が生じる。

以上より,Fbw7/p38経路を介したOsx調節,骨芽細胞分化抑制を介して骨代謝調節機構の一部として機能していることが示された。

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© 2023 日本小児歯科学会
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