2023 年 61 巻 1 号 p. 24-34
当科の30年前の調査と比較して歯に外傷を受ける小児は増加している。そこでわれわれは,当科に口腔顔面領域の外傷を主訴に来院した小児患者の傾向の把握と,的確な対応法の検討を目的として,2016年から2018年の3年間に外傷を主訴として当科を受診した15歳以下の初診患者227名について実態調査を行った。
1. 外傷を主訴に来院した患者は初診患者数の14.1%であり,初診時年齢は,乳歯の受傷では0~3歳,永久歯の受傷では7~9歳が多かった。
2. 外傷の分類では,乳歯は脱臼が最も多く,永久歯は,脱臼と破折がほぼ同数であった。軟組織を損傷した症例では裂傷が最も多かった。
3. 受傷歯の経過では,乳歯の17.7%,永久歯の18.5%に外傷歯の後遺症(口腔内の診察およびエックス線検査より変色,病的動揺,病的歯根吸収,根尖部透過像,後継永久歯への萌出障害を確認し,そのいずれかを生じた症例)を認めた。外傷の分類別の後遺症の発現率において乳歯では振盪が最も多く,永久歯では不完全脱臼が最も多かった。初診時の対応として,振盪では経過観察,不完全脱臼では整復・固定を行った症例が大部分であった。
本調査の結果,乳歯の振盪に対しては経過観察を永久歯に交換するまで,また永久歯の不完全脱臼に対しては受傷後一年以上の経過観察が必要である。外傷を受傷した全ての患者に長期的な経過観察が必要であることを,歯科医療関係者や保護者のみならず,保育・教育関係者にも広く周知することが重要である。