2023 年 61 巻 1 号 p. 35-43
小児を取り巻く環境,特に保護者の歯科医療への要望の変化や地域の特性は,小児歯科医療に大きな影響を与えると考えられる。そこで,地域の医療機関と連携する大学病院としての役割を検討することを目的とし,2008年1月から12月までの1年間と2018年1月から12月までの1年間の初診患者の実態調査を実施し以下の結果を得た。
1.初診患者数は,2018年では人数が減少したが,学童期の割合は増加した。紹介患者数は人数・割合ともに増加した。
2.主訴は,両年ともに齲蝕治療関連が約40%を占め,次いで健診・齲蝕予防関連,外傷の順であった。
3.居住地別主訴では,主訴の分布に大きな違いはみられなかったが横浜市の齲蝕治療関連が増加した。
4.主訴別年齢では,3~5歳の齲蝕治療関連が増加した。
5.紹介患者の主訴では,外科処置に関するものが増加した。
6.授乳期の栄養方法では,母乳が最も多く両年ともに平均離乳開始時期は7か月であった。2018年において離乳完了時期は2008年よりも2か月遅かった。離乳完了期が18か月以降の栄養方法では,両年ともに母乳が最も多かった。
以上の結果は,小児の健全な口腔の育成に寄与するためには,横須賀・三浦地域の初診患者の実態の経時的な変化を考慮することの重要性を示している。また,患者の生活に寄り添いながら,地域の医療機関と連携し,高次医療機関として専門性の高い歯科医療を提供することが当科の使命であるといえる。