抄録
乳臼歯隣接面の齲蝕診断に,咬翼法X線写真を用いることで,視診や触診よりも検出率が高いことはよく知られている。しかし,実際の齲蝕侵襲程度を正確に描写し得ないのではないかという疑問がある。そこで,とりあえず抜去乳臼歯を用いて視診による判定結果と,規格撮影したX線像との関係について,検討を行うとともに,いわゆる初期齲蝕群のものについては,未脱灰標本を作製し,X線像と実際の齲蝕侵襲像との関係について検討を行った。その結果,いわゆる初期齲蝕群については,視診による判定と,X線写真による判定は一致しないことが多く,診断の困難性がうかがわれた。また,X線写真でみられる透過像より,実際の齲蝕侵襲程度がまさっている傾向がみられた。一方,齲蝕が象牙質におよんでいる場合のX線写真では,比較的鮮明にその透過像を判定することができ,診断は容易であると考えられた。