抄録
Odontodysplasiaは,McCa11ら(1947)により初めて記載された疾患で非対称性,局所性にあらわれ,エナメル質,象牙質の著しい形成不全と石灰化不全を主な特徴とする。X線像で特有な幻影状を呈することから,Rushton(1965)は,Ghost teethとも呼び,原因不明の特異な形成異常である。本症は稀な疾患で,約50例程度が記載されているにすぎず,本邦での報告はほとんどみない。今回,我々は,ABCにOdontodysplasiaを認める1歳11カ月の男児の症例に遭遇した。全身的に発育栄養状態に異常は認められず,手根骨の化骨状態も正常であった。_??_の萌出をみるが,BCは歯冠の一部しか萌出しておらず,ABC部歯肉にび慢性の発赤・腫脹・排膿を認めた。また,レントゲン写真より,ABCとその後継永久歯胚にOdontodysplasia特有のX線幻影像を認めた。病理組織所見では,エナメル質は薄く波状の凹凸を呈し,小柱の構造・配列は不規則であった。象牙質も薄く厚さも不規則で,そのほとんどが球間象牙質で占められ,冠部象牙質には多くのcleftが観察され,その一部は歯髄腔にまで達するものもあった。象牙細管の走向も不規則で,肥厚したpredentin内にはodontoblastや血管が陥入しているのが認められた。Cにおいては,歯髄は正常像を呈していたがodontoblastの配列はすうそであった。