小児歯科学雑誌
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乳歯に付着した歯石の組織学的研究
東 昇平川原 哲子中川 武幸島 史和花井 美智子小高 鉄男鈴木 康生佐々 竜二
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1981 年 19 巻 3 号 p. 448-460

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抄録

乳歯に付着した歯石様構造物について,乳酸脱灰セロイジン二重包埋法により作製した脱灰切片,microradiogram,走査電子顕微鏡,エネルギー分散形X線分析装置,微小硬度計などにより検索を行った。
脱灰切片およびmicroradiogramにより乳歯のエナメル質の表面,セメント質の表面,歯根の吸収窩の象牙質面に顆粒状構造,層板状構造,波濤層状構造を呈する歯石を認め,永久歯に付着した歯石とほぼ同様な組織構造を有することを認めた。
また,走査電顕により観察した結果,乳歯の歯石表面,割断面,歯質との付着面に石灰化した線状菌あるいは菌体間の石灰化物の他,板状の結晶構造が認められた。歯石の付着面には大小の六面体の結晶構造が認められた。これらの歯石の各面をエネルギー分散形X線分析装置による点分析を行ったところ,各面において高いピークのCaとPが検出されたが, その他の元素は低いピークのZ n , S , C l が, また, 歯質との付着面に認められた六面体の結晶構造では高いピークのCaとPの他に,低いピークのMgが検出された。乳歯の歯頸部付近エナメル質に付着した歯石のVickers微小硬度値は144-198V.H.N.を示し,永久歯の歯石の硬度値とほぼ同程度であった。乳歯の歯石の付着は6才以上の小児に認められ,その歯石の色調は乳白色および緑白色のものが多かった。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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