小児歯科学雑誌
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フッ化ジアンミン銀塗布による乳臼歯隣接面齲蝕の抑制に関する研究
1.フッ化ジアンミン銀塗布による健全および白斑エナメル質への影響
堤 修郎
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1981 年 19 巻 3 号 p. 507-522

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抄録
Ag(NH3)2は,乳歯齲蝕の進行抑制剤として,本邦で広く臨床に応用されており,その有効性が認められているフッ化物である。しかし,本薬剤の齲蝕抑制機序に関する研究の多くは,健余歯質や齲蝕象牙質を対象としたものであり,臨床上問題の多い白斑エナメル質についての研究は少ない。そこで,Ag(NH3)2Fの齲蝕抑制機序の一端を解明する目的で,健全エナメル質および白斑エナメル質に対する本薬剤の影響を,F,Agの取り込みと,その停留の面から調べた。さらに,白斑エナメル質の再石灰化に及ぼす影響および再石灰化後の変化を,耐酸性,組織学的,結晶学的な面から検討を加えた。その結果,健全エナメル質へAg(NH3)2Fを3分間塗布することにより,F,Agの著明な取り込みと,約100μm内層にまで浸透することが判明した。一方,白斑エナメルエ質においては, 健全エナメル質よりF , A g が多量に取り込まれ, かつ, 長期間停留することが判明した。また,Ag(NH3)2FはNaFやSnF2より白斑エナメル質の再石灰化を促進させ,再石灰化後の耐酸性も向上した。さらに,白斑エナメル質の結晶性も,無処理のものより向上していることが判明した。以上の結果から,Ag(NH3)2は,健全エナメル質および白斑エナメル質に対して,抗蝕性を付与し,その齲蝕予防と進行抑制に有効な薬剤であることが示唆された。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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