抄録
乳幼児用食品とくに乳幼児ビスケットの硬さが,その摂取時における咀嚼筋活動にどのように影響を与えるか知るべく本研究を行った。
被検児は,いわゆる正常咬合と思われるHellmanの咬合発育段階IIAの幼児6名である。咀嚼試料としては,成分配合を一致させた,硬さの異なる同型の3種類のビスケット(軟かいビスケット-平均45g/mm,中程度のビスケット-平均82g/mm,硬いビスケット-平均132g/mm)を試作した。
筋電図は, 左右両側の側頭筋前部( T A ) と咬筋浅部( M ) から, 各ビスケットの自由咀嚼の開始時から嚥下終了時まで記録した。これらを測定して,筋活動量(積分値),咀嚼リズム,咀嚼回数,および咀嚼時間を求め,各ビスケット間におけるそれらのちがいを比較した結果以下の結論を得た。
1.硬いビスケットほど,咀嚼時における咀嚼筋活動量は多い。
2.硬いビスケットほど,TAよりの咀嚼リズムにおけるBurstの放電持続時間は長い。
3.硬いビスケットほど,咀嚼回数および咀嚼時聞は数多く長い。
4.咀嚼筋の積極的な機能力を期待するには,約80g/mm以上のショートネスを持ったビスケットが必要であると考えられる。
5.硬さの違いによる咀嚼筋活動量の違いをみると,TAよりもMにその影響が強く現われる。