1981 年 19 巻 3 号 p. 523-536
歯牙隣接面は,エナメル質初期齲蝕病像であるいわゆる白斑の好発部位であり,加えて,頬舌側平滑面よりS.mutansの検出率が高いことも報告されている。このように形態的にS.mutansが停留し易い部位において,Ag(NH3)2Fが抗菌的にどのような作用を及ぼすかを検討した。
in vitro で人口白斑エナメル質表面を用いてAg(NH3)2Fによるプラーク形成への影響と,in vivo において,Ag(NH3)2Fの隣接面への局所塗布による隣接面プラーク細菌叢に及ぼす影響について検討した。
その結果,Ag(NH3)2F塗布人工白斑エナメル質表面への S.mutans の初期付着と付着した菌の増殖および集落形成が,NaF,SnF2より著明に抑制された。
Ag (NH3)2F 塗布直後には, 隣接面プラーク中の細菌がほぼ完全に殺菌され, S.mutans 以外の連鎖球菌やその他の口腔細菌は, 速やかに塗布前の状態に回復するが, S . mutans の回復は著明に遅れることが判明した。
以上の結果から,Ag(NH3)2Fは細菌学的な面からも,抗齲蝕効果を発揮し,齲蝕予防およびその進行抑制に有効な薬剤であることが示唆された。