1981 年 19 巻 3 号 p. 619-626
小児歯科臨床にたずさわる者にとって,障害児の歯科治療をいかにすべきかは,大きな問題となってきている。我々は今回,本学小児歯科外来における障害児治療の実態を初診時の齲蝕状態とその処置内容をとりあげ調査検討した。
対象は,3歳から12歳までの障害児280名(男児176名,女児104名)であり,さらに主たる障害別に6群(CP群,ダウン群,てんかん群,自閉傾向群,MR単群,その他群)に分類した。
人数分布においては,年齢別には5歳児が,障害別では自閉傾向群が最も多く,また自閉傾向群において明らかな男女差(男児68名,女児14名)がみられた。
乳歯の齲蝕状態及びその処置内容は次のような結果を得た。
罹患歯率は平均56.8%であり,増齢的に増加する傾向がみられたが,障害別では大きな差は認められなかった。
処置率は約80%であり,修復処置としては乳歯冠修復,アマルガム充填を多く認めた。
処置歯のうち,歯内処置を行ったものは,9.8%であり,処置内容としては生活歯髄切断処置が66.5%と最も多くみられた。