抄録
Goltz症候群(Focal Dermal Hypoplasia)は,広範囲な線状の皮膚萎縮,異常色素沈着および毛細管拡張などの特異な皮膚病変を主徴とする中胚葉および外胚葉系組織の異常を呈する先天異常疾患である。全身的には皮膚の異常のほかに四肢の奇形,爪,毛髪などの形成不全および頭蓋の変形があり,90%以上が女児に発現する。一方歯科学的所見として歯の先天欠如,顕著な形成不全,萌出遅延および口唇周囲の良性腫瘍が多く認められる。本症はLiebermannによって報告されて以来,50例以上の報告があるが,本邦ではわずか4例だけで,しかも歯科学領域からの詳細な報告はなされていない。今回われわれは臨床的ならびに組織学的所見から本症と診断された14歳男児について歯科学的観察を行い知見を得た。
口腔所見:_??_の先天欠如,全歯の顕著な形成不全および矮小歯化,Aの晩期残存,5の萌出遅延,歯列不正,および上下顎骨の形成不全を認める。軟組織では左口角部および口蓋に乳頭腫を認める。
その他の所見:身長138.2cm,体重37.5kg,頭囲50.3cmで全体的に小さい。顔面,背部,腰部,両下肢背面に特異な皮膚症状を認める。小頭,頭蓋およびトルコ鞍の変形,および右下肢腓骨の形成不全,右足第2趾から第5趾までの欠如,その他左耳介の奇形などの多岐にわたる奇形を認める。