1982 年 20 巻 2 号 p. 281-289
1歳6ヵ月±2週間の幼児799名(男児:414名,女児:385名)に対する歯科健診ならびに母親へのアンケート調査結果にもとづいて,この時点の齲蝕発生に関与する要因の分析を行った.幼児に対する歯科健診の内容は,齲蝕, 口腔清掃状態, 萌出歯数の診査,カリオスタット(三金工業製)値の測定, および身長, 体重の測定である.また母親に対しては, カリオスタット値の測定とともに, 哺乳方法, 間食, 歯磨き習慣, 知っている歯科用語数, などに関するアンケート調査を行った.
そして, 林の数量化理論第II類の統計的手法を用いて, 幼児の齲蝕の有無を外的基準とする判別分析を行った.
その結果,1歳6ヵ月児における齲蝕罹患群と健全群との判別には, 口腔清掃, 食習慣,発育, および口腔習癖などの要因が, 強く関与していることが判明した.これらの要因は, 低年齢児に対する歯科衛生指導を行う上で, 最も重視すべき事柄であることがうかがわれた.