電気抵抗値を応用した歯髄診断法と処置の選択法に若干の修正を加え, 臨床応用を行った1年経過例の予後について検討した.
対象は, 九州大学歯学部附属病院小児歯料外来を訪れた2歳から10歳までの幼小児49名,120歯で,齲蝕が象牙質あるいは歯髄にまで及んでいると, 肉眼的に判断された乳歯を用いた.X線写真撮影後,局所麻酔下でラバーダム防湿を行い, カリエスメーターを用いて電気抵抗値を測定した.測定は軟化象牙質の除去前後に行われたが, 今回は除去後の電気抵抗値について検討を行った.
全症例120例について, 経過分類ののち, 予後の判定を行ったところ, 予後の判定が可能であった117例中, 良好111例(94.9%), 不良6例(5.1%)であった.
健全象牙質が存在すると考えられる電気抵抗値18.1KΩ 以上の症例では,39例中1例を除くすべてが良好であった.
電気抵抗値18.0~14.1KΩ の症例では,18例中水酸化カルシウム断髄を行った2例が不良,FC断髄を行った16例はすべて良好であった.
電気抵抗値14.0KΩ以下の症例では,抜髄7例中1例(14.3%)が不良,FC断髄53例中2例(3.8%)が不良であった.
以上の結果から, 齲窩の電気抵抗値を測定することによって,1)露髄の見落としが避けられ,2)健全歯質残存の有無を知ると共に, 歯髄の状態もある程度推測できると思われた.
したがって, 電気抵抗値の測定は, 臨床上客観性のある診断を行う上で,有効な一手段であると思われた.
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