小児歯科学雑誌
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Hypoglossia-Hypodactylia症候群の臨床例
堤 脩郎増田 典男落合 伸行斉藤 隆裕祖父江 鎮雄北村 隆
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キーワード: 奇形, , 無舌症
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1982 年 20 巻 2 号 p. 296-305

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抄録

先天性無舌症は, 遺伝因子あるいは, 妊娠初期の子宮内環境因子に起因し, 発生学的には, 舌原基の第1鰓弓の形成不全によるものと考えられている.
特に,Hypoglossia-Hypodactylia症候群と呼ばれる舌の先天欠如は四肢の奇形を伴う極めてまれな症例であり, その報告も少ない.我々は, 舌の欠如と心室中隔欠損を呈し臨床所見よりHypoglossia-Hypodactylia症候群と診断された症例について5年間にわたって診察を続けたので報告する.
患児は, 初診時,3歳2ヵ月の女児で,下顎骨劣成長を主訴として,大阪大学歯学部附属病院を来院し,広汎性齲蝕と咀嚼障害により, 小児歯科を受診した.
初診時の所見は, 舌体部がほぼ完全に欠如し,下顔面部の著明な劣成長により鳥貌を呈していた.舌の欠如のため, 下顎歯列弓は著しく狭窄し,上顎口蓋部に完全に陥入した状態であった.X 線診査の結果, 〓の先天欠如が認められたが, その他の永久歯胚の成長に異常は認められなかった.齲蝕の処置を行った後,咬合挙上,咀嚼機能および審美性の回復を求めて,上下顎に小児義歯を装着したが, その際狭窄した下顎歯列弓との咬合を得るため, 上顎義歯口蓋側に咬合面を延長した.7歳7ヵ月時の患児の側方頭部X線規格写真分析の結果では,上下顎顔面の成長が認められ, さらに現在, 言語治療により, 口腔底結節が舌の代償を果たし, 咀嚼, 嚥下, 発音ともに著しい改善を示している.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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