小児歯科学雑誌
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顎骨の悪性腫瘍に対する放射線療法後の根未完成歯ならびに未萌出歯に関する病理学的検討
武田 泰典
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1982 年 20 巻 4 号 p. 501-512

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抄録

顎骨の悪性腫瘍に対する放射線療法後の根未完成歯ならびに未萌出歯の形態的変化を病理組織学的に検索した.患児は6歳時に悪性腫瘍のため下顎骨に8,000radの放射線照射を受けており,1年5ヵ月後に下顎骨半側切除がなされた.切除材料中には小臼歯と大臼歯が含まれており,また腫瘍の浸潤増殖は第1大臼歯遠心根部より下顎枝におよんでいたと考えられた.根未完成でかつ未萌出であった第1ならびに第2小臼歯では根形成が著しく障害されており,同部に塊状のdysplastic dentinが形成されていた.このdysplastic dentin周囲には特定の細胞の配列はなく,疎な結合組織がみられるのみであった.細管象牙質に接して配列の不規則な象牙芽細胞がみられたが,その下層の歯髄組織本来の構築は失われていた.また,形成歯根周囲のHertwig上皮鞘は完全に消失していた.歯根の完成していた第1大臼歯では歯髄腔側象牙質の内部吸収とosteodentinの添加,歯髄組織の線維化がみられ,これらの変化も放射線照射による影響と考えられた.第2大臼歯の歯冠部ならびに歯根部の象牙質は著明に吸収されており,この吸収は腫瘍の浸潤増殖によるものと考えられた.また象牙質吸収面にはdysplastic dentinが形成されていた.これらの所見に対して種々の考察を加えた.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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