抄録
症例は,生後1歳1ヵ月の男児で右肺形成不全のため生後1ヵ月より経鼻気管内挿管下に,長期人工呼吸を行っている.下顎乳中切歯萌出にともない,歯牙先端部が舌尖部下面に接触し,楕円形の潰瘍を形成し,時として出血を認めることもあった(Riga-Fede病).
従来からこのような症例に対しては,歯牙切端部の鋭縁の削合,あるいは抜歯処置がとられてきたが,本症例では萌出時期も正常であり,また骨植も堅固であったことから,私たちは血友病児や多数歯牙抜歯後創部の安静を保持するため使用されている保護床(弾性合成樹脂床)を作製し,これを用いることによって潰瘍が治癒した症例について報告する.