抄録
3歳6ヵ月の女児に発生した下顎右側第二乳臼部のameloblastic fibromaに遭遇した.口腔内所見としてEは,未萌出で弾性硬の歯槽部が触診された.Dは動揺や転位もなく,健常であった.X線写真所見ではEの埋伏とその歯冠部を取り囲む境界明瞭なX線透過像が認められた.Eの歯根は完成しているが,5の歯胚は認められなかった.処置として局所麻酔下で病巣を一塊として摘出した.摘出物は帯赤色の線維腫様組織であった.病理組織学的な所見として歯乳頭に類似した幼若な細胞に富んだ線維性組織中に散在するameloblast様の胞巣からなっており,ameloblastic fibromaと診断した.
本邦での私たちが知り得た症例数は本症例を含めて26例を数えるのみであり,うち19例が男性で,7例が女性であった.また本症例は年齢的にみて女性としては従来の報告中最年少にあたる.