小児歯科学雑誌
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小児の歯科X線被曝線量の軽減に関する実験的研究特に口内法小児用開放端コーンの開発について
楯野 英實
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1982 年 20 巻 4 号 p. 540-555

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抄録
小児は放射線感受性が高く,成人よりも被曝に対する危険性が高い.従って,小児に対する医療上の被曝については,未成熟臓器である甲状腺,眼球の水晶体,性腺などを中心に,できる限りの防護を考慮しなければならない.
そこで,小児の被曝線量をTLD (Thermo Luminescence Dosimeter)と小児用 Mix-D ファントームを用いて,各種撮影法における被曝線量を測定した.測定部位は,皮膚,水晶体,甲状腺部,性腺である.さらに,これらの測定結果をもとに小児用コーンを開発し,従来のコーン(以下,成人用コーンと称す)と比較検討し,つぎの結論を得た.
1.各種撮影法の被曝線量を測定した結果,小児口内法(全顎6枚法)が各測定部位ともに最も高い値を示した.
2.小児口内法の部位別測定値では甲状腺の被曝線量が最も高く,0.734±0.017Rを示した.
3.性腺の被曝線量は全ての撮影法で0.001R以下の値であった.
4.新しく開発した小児用コーンは,成人用コーンより各測定部位ともに著明な被曝軽減が認められた.また,小児用コーンを用いることにより散乱線も減少し,画質も鮮鋭となった.
5.甲状腺癌の致死的リスクは,成人用コーン10-6オーダーに対し,小児用コーンでは10-7オーダーに減少した.
6.医療被曝上限に年線量当量限度を1つの指標と考えると,全顎口内法を一年間に何回撮影すれば,水晶体の年線量限度に達するかを比較した結果,成人用コーンでは約3回,小児用コーンでは約88回であった.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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