抄録
著者らは,本学小児歯科外来を訪れた3歳7ヵ月の女児に,後継歯を伴った下顎左側乳中切歯部の過剰歯と,下顎右側乳中切歯と過剰歯との融合歯(双生歯)を認めた稀有な症例に遭遇した.
家族歴では,同胞の弟(1歳8ヵ月)に上顎乳前歯正中部に埋伏過剰歯を1歯認めた.その他,特記すべき事項はない.既往歴は,胎生3週頃流産の徴候があり,入院し,その後回復.出産は満期にて吸引分娩である.
全身的所見は良好であり,初診時体重は16.1kg,身長104cm,であった.
口腔内所見は,乳歯列は,Hellmanのdental stage IIAで,〓にアマルガム充填がされ, また〓頬側部には,フッ化ジアンミン銀の塗布がされている.そのほか硬組織および軟組織の異常は認めない.しかし,下顎左側乳中切歯部に過剰歯を認め,乳歯列内にあり,色調,形態,大きさは正常乳中切歯と類似している.咬合状態は,正中のずれはなく, 前歯部の被蓋は浅く両側上下顎乳側切歯は切縁で接している.また上下顎共に歯間空隙を認める.X線写真では,下顎乳切歯部に5歯認め,夫々に後継歯を有する.その他歯胚の数および発育には異常は認めない.
各所見を総合して,下顎正中部の乳切歯は過剰歯と判定し,それに後継歯を認めた.また下顎右側乳中切歯は,形態的に大きく,歯冠部に融合線を認め乳中切歯部過剰歯と乳中切歯の融合した双生歯である.