抄録
本研究は,心身障害児の歯科治療時の取り扱い法を決定する基準の手がかりを得るために調査した。
本学小児歯科において,歯科治療の後,定期診査を受診している心身障害児73人(男児55人,女児18人)を治療時の取り扱い法ならびに定期診査時の協力状態から3群に分類した。すなわち,
Type I:外来治療の後,健常児と同様に定期診査を受けている患児。
Type II:外来治療の後,障害児班で定期診査を受けている患児。
Type III:全身麻酔下治療の後,障害児班で定期診査を受けている患児。
トレーニング効果,患児の能力,口腔内状態について3群間で比較し,以下の結果を得た。
1. 73人中Type Iは12人,Type IIは24人,Type IIIは37人であった。
2.治療開始以前のトレーニング回数は,Type Iが1.4回,Type IIが1.8回であった。全麻決定までのトレーニング回数は3.6回であった。
3.Type IIIでは,自閉的傾向群が57.8%と他のTypeに比して高い割合を占めていた。
4.Type IIIは,話しの理解能力において他のTypeより著しく劣っていた。
5.口腔内状態では,Type IIIの齲蝕罹患が他のTypeに比して高く,齲蝕重症度指数43.2と最も高い値を示していた。