小児歯科学雑誌
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2ヵ月の小児にみられた未完成乳歯過剰歯が早期に排出された1例
上原 智恵子高宮 哲二富沢 美恵子野田 忠鈴木 誠
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1983 年 21 巻 2 号 p. 264-271

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抄録
著者らは,生後2ヵ月の小児で,上顎左側乳犬歯部に腫瘤を伴った未完成乳歯が早期に排出された1例に遭遇したので,その病理組織学的所見もまじえて報告した。
本症例の未完成乳歯は,上唇左側の不完全唇裂に関連して生じた乳歯過剰歯と考えられる。
病理組織学的所見としては,歯のエナメル小柱や象牙細管などの基本的構造はできているが,形成程度は不十分で,根の形成もみられなかった。さらにエナメル質や象牙質への細菌の侵入や吸収破壊がみられ,また,歯髄は炎症性肉芽組織にほとんどおきかわっており,はっきりとした象牙芽細胞の規則正しい配列や歯髄本来の構造はあまりみられなかった。腫瘤の大部分は炎症性肉芽組織で占められ,腫瘤中央部より歯冠内側直下までは,表層は細菌の増殖を伴って壊死に陥っており上皮の被覆もなかった。基部付近には切除端歯肉固有層から連続する線維組織が入りこんでおり,その表面は上皮の被覆があった。
成因については,生下時にこの乳歯過剰歯が,比較的口腔粘膜表面近くに存在したために吸啜作用などの機械的刺激をうけやすく,歯が未完成の状態で炎症により歯髄部分が破壊され,それ以後の歯の形成が停止し,一種の異物として,早期に口腔内に排出されたものではないかと考える。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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