小児歯科学雑誌
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電気抵抗値による乳歯歯質厚径に関する研究
天野 秀昭香西 克之信家 弘士長坂 信夫
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1983 年 21 巻 3 号 p. 483-490

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抄録

窩底と歯髄腔間に残存する歯質の厚径および性状を客観的に把握することは小児歯科臨床において重要なことであり,電気抵抗値を用いた診断法が研究され臨床に応用されている。
本研究では同一の歯牙に順次深くした窩洞形成を行い,窩底下残存歯質厚径の変化と電気抵抗値との関係について検討した。
試料は本学小児歯科外来を訪れた小児の交換期をむかえた健全な乳歯計52歯であり,抜去後ただちに試片を作製し実験に供した。
試料には順次深くした窩洞形成を行ない,そのつど窩底下残存歯質厚径およびカリエスメーターによる電気抵抗値の測定を繰り返し,1歯平均8.5ポイント計443ポイントにおける計測値を得た。
その結果,象牙質内窩洞においてはほとんどの試料が600kΩ 以下の電気抵抗値を示し,またすべての試料で窩底下残存歯質厚径の減少に伴い電気抵抗値も減少を示し,減少傾向にも試料間に類似性が認められた。しかし同一の電気抵抗値に対する窩底下残存歯質厚径の値には試料間に1SD約320μ のばらつきがあり,原生象牙質層のみとした試料の値1SD約180μ と比較し,大きな試料間の差を認めた。このことから,残存歯質の,特に歯髄側象牙質の性状が電気抵抗値に大きな影響を与えていることが示唆された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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