小児歯科学雑誌
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21 巻 , 3 号
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  • 保刈 徳久, 大野 紘八郎, 大森 郁朗
    1983 年 21 巻 3 号 p. 293-304
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    象牙質形成不全症(dentinogenesis imperfecta)は,象牙質の形成が遺伝的因子によって原発的に障害される疾患であり,遺伝形式は常染色体優性遺伝を示し,浸透率の高い疾患である。
    本疾患は,乳歯および永久歯ともに,特有な灰褐色の歯冠着色と,萌出直後からエナメル質の破折をともなう急激な咬耗をきたすばかりでなく,歯根形成不全にもとずく歯の動揺など,臨床的に困難な問題をかかえている疾患である。
    今回,鶴見大学歯学部附属病院小児歯科外来を訪れた患児で象牙質形成不全症と診断された姉弟について,遺伝背景,臨床所見ならびに脱落乳歯の組織学的所見について検索し,以下のような知見を得た。
    1.遺伝形式は,問診の結果,常染色体優性遺伝形式と考えられるが,母親およびその同胞の発症は認められなかった。
    2.臨床的ならびに組織学的に,乳歯および永久歯のすべてにわたり,象牙質形成不全症の様々な所見が認められた。
    3.姉弟の乳歯列期の歯列保護に対して,処置法に違いがあり,低年齢時の歯冠歯質の保護の有効性が認められた。
    4.乳歯列期,混合歯列期,永久歯列期において総合的な治療を行なうことの重要性が示唆された。
  • 大竹 邦明, 武井 秀光, 平田 順一, 高橋 勉, 岡田 玄四郎, 大久保 一郎, 深田 英朗
    1983 年 21 巻 3 号 p. 305-317
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    頭部X線規格写真は,小児歯科の臨床で用いられている臨床検査の一つであるが,X線の被曝,撮影の場所の制限などが問題になる。そこで頭部X線規格写真に代わるものとして,臨床で簡単に撮影でき,かつ安価な顔面規格写真撮影装置と規格写真投影装置を当教室で考案した。これらを用いて得られた透写図が,臨床検査の一つとして利用しえるかどうかを比較検討した。その結果,
    1.側貌頭部X線規格写真と5度斜位頭部X線規格写真の各計測点の一致性の検定から,軟組織上の計測点PnとFhを計測基準点としても,軟組織および硬組織上の計測点でも一致する計測点の数が同じであることがわかった。
    2.左の5度斜位顔面規格写真の軟組織上の計測点と側貌頭部X線規格写真の軟組織上の計測点との一致性が高く,側貌頭部X線規格写真に代用しえることがわかった。
    3.その結果,左の5度斜位顔面規格写真から硬組織上の計測点を予測しえる可能性が高いことがわかった。
    4,左の5度斜位顔面規格写真と側貌頭部X線規格写真との間で一致性のある点は,Fh,No,Pn,Ul,Chの各計測点で一致性の認められなかった計測点はSbn,Ls,Ll,Scの各計測点であった。
    5.一致性の認められなかった計測点でも左の5度斜位顔面規格写真の方が側貌頭部X線規格写真よりも再現性の高いことがわかった。
  • 横井 勝美, 山内 哲哉, 山田 ゆかり, 土屋 友幸, 黒須 一夫
    1983 年 21 巻 3 号 p. 318-328
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯科初診時における小児の適応性に影響する要因のトータルパターンを検索するために本学小児歯科外来を受診した3歳から12歳までの男女児102名,およびその両親204名,総計306名の調査資料をもとに分析した。
    分析した要因は,父親の養育態度8項目,母親の養育態度8項目,小児の性格10項目,ならびに質問調査6項目の総計32項目である。これらの要因の分析は,適応・不適応を外部基準とした数量化II類による多変量解析を行なった。
    結果を要約すると次のようであった。
    1.適応・不適応の外部基準の判別効率を示す相関比は,0.66と高い値であった。
    2.適応児に影響している要因としては,次のものが抽出された。
    1)父親の養育態度では,「強い積極的拒否傾向」
    2)母親の養育態度では,「弱い不安傾向」
    3)小児の性格特性では,「社会性あり」,「家庭への不適応傾向」,「攻撃・衝動的傾向なし(温和・理性的)」
    3.上記の各要因を,偏相関係数と数量化得点の範囲から求めた効力順にみると,「小児の社会性」,「小児の家庭への不適応」,「父親の積極的拒否型の態度」,「小児の温和・理性的」,「母親の低不安型の態度」の順であった。
  • 森主 宜延, 近藤 清志, 荒木 良子
    1983 年 21 巻 3 号 p. 329-336
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    山村へき地の無歯科医地区において,どのような歯科医療対策が最も効果的かつ実現可能であるかを検討するためには,地域の歯科的状況の把握が不可欠である。そこで,岐阜県大野郡白川村の30歳以上の成人を対象として歯科疾患の実能と口腔衛生に対する意識の調査を実施した。その結果,この地域では,若年からの喪失歯数が多く,従って総義歯使用者が多いこと,歯周疾患が多いこと,口腔衛生に対する知識のレベルが低いこと等がわかり,この地域においては,長期的展望のもと,乳幼児期からの予防管理体系を確立し,住民全体の口腔衛生に対する意識の向上をめざす必要が示唆された。同時に本調査は,このような体制を導入するにあたり,住民への動機付けの機会ともなったと考える。
  • 森主 宜延, 近藤 清志, 荒木 良子
    1983 年 21 巻 3 号 p. 337-343
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    無歯科医山村へき地の小児に対する歯科医療は,その予防の可能性から,自主的に歯科健康管理体系を作り,その活動の内で歯科治療需要を減少させていくことが最良の対策と考える。本研究は,地域の歯科医療分析後,こどもに対する単純で簡便な方法で歯科健康管理を実施し,その評価から,最も効率のよい管理体系を組み立てることを目的とした。
    対象は岐阜県大野郡白川村在住の小児とした。その結果,齲蝕罹患状況は全体的に改善され,特に上顎乳中切歯,下顎乳臼歯においては顕著であった。処置状況はあきらかに改善された。また,口腔清掃習慣は改善されなかったが,間食については,摂取回数が改善された。成人達の歯科的予防思想は改善された。
  • 関口 基
    1983 年 21 巻 3 号 p. 344-352
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,アミノ酸輸送系に重要な役割を担っているγ-グルタミル回路の中心的な酵素であるγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP)と,ラット歯胚の石灰化過程との関連性について検索するために,組織化学的,生化学的分析を実施して以下のような結果を得た。
    1)ラット臼歯部歯胚におけるγ-GTP活性は,歯胚の形成過程において,エナメル芽細胞,象牙芽細胞の分化がおこなわれているところに局在していた。
    2)ラット臼歯部歯胚でのγ-GTP活性,タンパク量の経日的変化には類似性がみられた。
    3)カルシウム量の経日的変化は,γ-GTP活性およびタンパク量の変動と較べて相反した変動傾向を示した。
    4)アルカリフォスファターゼ活性は,リン量とともに,ほぼ3日間を周期として変動がみられた。
    5)γ-GTP比活性およびアルカリフォスファターゼ比活性値は,生後10日前後に著しい上昇を示した。
    6)γ-GTP活性の変化は,ラット歯胚の石灰化の指標となりうることが示唆された。
  • 堀口 浩
    1983 年 21 巻 3 号 p. 353-375
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    予防〓塞の前処理として行われている酸処理はシーラントとエナメル質との接着力向上に有効であり,必要不可欠なものである。反面,酸処理はエナメル質を人為的に脱灰し,歯質に侵襲を加えるものと考えられる。そのためシーラントにより被覆されない酸腐蝕エナメル質に対しては歯質の強化ないし再石灰化の促進を配慮しなければならない。そこで本研究では酸処理がエナメル質の性状におよぼす影響ならびに酸腐蝕エナメル質に対するフッ化ナトリウム溶液(フッ素イオン濃度9000ppm,500ppm,10ppm,pH6.5~6.8)の効果を検索するためin vitroによる実験を行なった。
    その結果,従来行われている酸処理方法では均一な酸腐蝕歯面は得られず,これに超音波操作を併用することによりほぼ全面に小柱構造が明瞭な像が観察された。また酸処理を施すことによりエナメル質表層の結晶性は低下する傾向が認められた。フッ化物溶液の影響として,フッ素イオン濃度9000ppm,500ppmに7週間浸漬したエナメル質にフッ化カルシウムの生成が認められた。さらに酸腐蝕エナメル質の結晶性はフッ素イオン濃度500ppm,10ppm溶液作用により向上する傾向が認められた。
    以上の結果,酸処理を行うことにより粗〓となり,結晶性が低下した酸腐蝕エナメル質に対しては,低濃度フッ化物溶液の適用が結晶性を向上させ,歯質の強化あるいは再石灰の促進に役立ち,好ましいことが示唆された。
  • 渡部 茂
    1983 年 21 巻 3 号 p. 376-389
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Phenytoin(DPH)を長期服用している重症心身障害児(36名)を対象に,体液中(血漿,耳下腺唾液,混合唾液)DPH濃度と歯肉増殖との関係を調査し次の結論を得た。
    1)耳下腺唾液,混合唾液DPH濃度は血漿総DPH濃度と高い相関を示し,かつ血漿蛋白非結合型濃度とほぼ等しい濃度値を示した。
    2)血漿総DPH濃度に対する割合は血漿蛋白非結合型濃度15.3%,混合唾液濃度19.0%,耳下腺唾液濃度14.3%であった。
    3)以上のことから唾液中DPH濃度の測定は直接血漿蛋白非結合型濃度を推定する非常に有効な手段であることを指摘した。
    4)歯肉増殖を呈していた者は36例中32例あり,軽度14例,中等度11例,重度7例であった。
    5)各検体の段階別平均DPH濃度を比較すると,軽度と重度においては血漿総濃度(p<0.001),混合唾液濃度(p<0.001),血漿蛋白非結合型濃度(p<0.001),1時間あたりの混合唾液DPH分泌量(p<0.05)に有意差が認められ,また,軽度と中等度,中等度と重度においても有意差が認められた。
    6)歯肉増殖程度を1から18まで分類した場合では血漿総濃度(rxy=0.71,p<0.001),混合唾液濃度(rxy=0.69,p<0.001),血漿蛋白非結合型濃度(rxy=0.57,p<0.01),耳下腺唾液濃度(rxy=0.55,p<0.02)などで正の相関が認められた。
    7)DPH濃度と歯肉増殖には密接な関係が認められたが,これは対象者が歯科的な管理を全く受けていなかったことに起因していると思われた。
  • 渡部 茂
    1983 年 21 巻 3 号 p. 390-402
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Phenytoin(DPH)の長期投与を受けている重症心身障害児(36名)を対象に,DPHの唾液成分に及ぼす影響を調査した結果以下の結論を得た。
    1)DPH投与群の混合唾液中Ca,Pi濃度の平均値は,対照群より有意(p<0.001)に高い値が得られた。
    2)混合唾液中Ca濃度は血漿総DPH濃度(rxy=0.711,p<0.001),血漿蛋白非結合型DPH濃度(rxy=0.724,p<0.001),混合唾液DPH濃度(rxy=0.627,p<0.001)との間に正の相関が認められた。
    3)混合唾液中Pi濃度は混合唾液DPH濃度(rxy=0.417,p<0.001),血漿総DPH濃度(rxy=0.408,p<0.02),血漿蛋白非結合型DPH濃度(rxy=0.393,p<0.05)との間に正の相関が認められた。
    4)1時間あたりの分泌量を乗じた混合唾液中Ca,Pi分泌量も各検体に正の相関が認められた。
    5)DPH投与群の血漿中Ca,Pi濃度はCaとPiの積において投与群の方が低い傾向(p<0.02)がうかがわれた。
    以上の結果,従来からのDPHの副作用としてカルシウム代謝に及ぼす影響のほかに,唾液中のCa,Pi濃度にも変動が現われることを指摘した。
  • 田村 康夫
    1983 年 21 巻 3 号 p. 403-425
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    咀嚼筋筋活動中に出現する小児の静止期(SP)とその潜時(La)について観察し,その出現様相を分析することにより,小児歯科臨床応用への可能性について検討することを目的として本研究を行った。
    被検者は顎口腔系に異常を認めないcaries freeに近い乳歯列期小児15名と個性正常咬合を有する健常成人11名を用い両群の比較を行った。また,小児15名のうち5名についてはmetal overlayにより実験的咬合干渉を下顎右側第2乳臼歯に付与し,経日的にLaおよびSPの変化を観察した。筋電図記録は76回/分のtooth tapping時の咀嚼筋筋電図を表面銀電極を用い導出し,同時に前額中央部より咬合音を導出し,Data-Recorderに記録した,再生はData-Recorderより波形解析装置ATAC210に咬合音をtriggerとして掃引し,LaおよびSPの持続時間を計測した。
    その結果,Laは小児群と成人群とで差は認められず,SPの持続時間は側頭筋,咬筋とも小児群の方が約2msec長い値を示していた。また,咬合干渉によりLaはほとんど影響が認められなかったが,SPの持続時間は側頭筋,咬筋とも有意に延長し,干渉を除去することにより,またもとの値に回復する傾向がみられた。以上の結果より,小児における咬合の機能的診断の一助として静止期を検討することは臨床的にも有効であることが示唆された。
  • 棚瀬 精三
    1983 年 21 巻 3 号 p. 426-440
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究では,グラスアイオノマーセメントの二次齲蝕発生抑制効果を検討するために,まず二次齲蝕発生にかかわる諸条件,すなわち,充〓歯の辺縁微少漏洩,フッ素溶出量,pH変化について比較検討し,さらにグラスアイオノマーセメントの窩壁歯質に対する影響を明らかにするため,窩壁エナメル質についてはin vitroにて,従来のシリケートセメント,およびコンポジットレジンを比較検討し,窩壁象牙質についてはin vivoにて実験を行い,本セメントの二次齲蝕発生抑制効果について基礎的な検討を行った。その結果,窩壁エナメル質においては本セメントより持続的に溶出するフッ素イオンの浸透により,耐酸性の向上が認められ,またエナメル質アパタイトのa軸方向において結晶性の向上が認められたが,エナメル質内層部窩壁においては,本セメント中に残留する酸によりわずかな表層下脱灰が認められ,エナメル質アパタイトのc軸方向に結晶性の低下が認められた。窩壁象牙質においては,フッ素イオンの浸透が約100μmの深さまで認められ,窩壁象牙質表層部での管周象牙質の石灰化の亢進,および細管開口部の狭窄が認められた。
    以上の結果から,本セメントから溶出するフッ素イオンにより歯質が強化され,二次齲蝕発生に対する抑制効果が示唆された。
  • 細矢 由美子, 後藤 讓治
    1983 年 21 巻 3 号 p. 441-451
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    健全並びに齲蝕下乳歯象牙質に対するエッチング材の酸処理効果を観察する事を目的に本研究を行った。
    資料としては,交換期に達し,抜去もしくは自然脱落した乳歯を使用した。健全乳歯については,エアータービンに装着したダイヤモンドバーで乾燥下に窩洞形成を行い,齲蝕症第2度の乳歯については,電気エンジンに装着したラウンドバーとスプーンエキスカベーターとで軟化象牙質を完全に除去した。エッチング材は,Adaptic, Silar, Clearfil付属のものを使用し,酸処理時間は1分とした。これらの象牙質面をSEMで観察した。
    その結果,窩洞形成後酸処理を行った健全乳歯象牙質面については,すべての症例で,象牙細管が開いている状態が確認された。しかし,酸処理後においても,1部の象牙細管がsmear layerで閉鎖されている症例も認められた。
    軟化象牙質除去後に酸処理を行った場合の齲蝕下乳歯象牙質面では,すベての症例で象牙細管が一応開いた状態が認められた。しかし,健全乳歯と比較すると,酸処理効果は低く,酸処理後も一部の象牙細管がsmear layerで閉鎖されている症例が多かった。また,酸処理により拡大された部分の象牙細管中に,棒状,管状および結晶状の構造物が認められた症例が観察された
  • 二木 昌人, 野中 和明, 浜野 良彦, 中田 稔
    1983 年 21 巻 3 号 p. 452-456
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    後継永久歯,特に下顎永久側方歯群の萌出と,それに関与する諸要因との関連性について統計学的な分析を行ない,考察を加えた。
    資料は,男子20名の経年的に撮影された左右の45。斜方頭部X線規格写真である。
    これより,月齢,永久犬歯・第1小臼歯・第2小臼歯の萌出量および歯胚形成最,乳犬歯・第1乳臼歯・第2乳臼歯の歯根吸収量,下顎骨成長量の合計11個の変数を求め,これら変数間の単相関係数,偏相関係数,および多重決定係数を算定した。
    その結果,月齢の影響を除いた後の偏相関係数において,先行乳歯の歯根吸収量は萌出量と高い相関性を有し,萌出量の評価に重要な要因であることが明らかになった。
    次に,萌出量を従属変数,歯胚形成量・月齢・月齢の2乗(月齢)・月齢の3乗(月齢)・乳歯根吸収量・下顎骨成長量を独立変数とした重回帰分析の結果,金田一による単一の変数にもとづく多項式分析結果と比較して,やや高い多重決定係数が得られた。
    つまり,複数個の要因を組み合わせることによって,萌出に関連する個々の要因の影響が反映され,より正確に萌出量の予測ができることが明らかになった。
  • 武田 康男, 井上 龍彦
    1983 年 21 巻 3 号 p. 457-462
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究はDPH長期服用が幼児歯肉組織に及ぼす影響を臨床的に検索することを目的とした。対象としたのはDPH服用児18名と正常児20名の合計38名で,全員臨床的健康歯肉を持つ12ヵ月から51.5ヵ月までの幼児である。歯肉臨床的所見(gingival bleedingindex),Plaque index,pocket depth血漿中濃度,服用期間,服用量(pro.Kg)について検討した。
    Plaque indexは,DPH服用群が対照群よりも高く,pocket depth は,DPH服用群が対照群よりも深くなることが認められた。とくに臼歯部のpocket Pepthが著しく深い傾向がみられたgingival bleeding indexが高い値を示したのは,ほぼDPH服用群であった。Poket depth とDPH服用期間,服用量(pro.Kg),血漿中濃度の間には相関関係はほとんど認められず,直接的な関連性は得られなかった。
    以上の結果から充分な清掃を行った臨床的健康歯肉においても,DPH服用群にはpocketdepthが深くなることが認められplaque controlが効果的になされないことが明らかとなった。出血傾向も服用群は対照群にくらべて著明で,症例によっては歯肉切除の適応となることも考えられる。
    DPH服用児の歯肉肥大に対しては,長期にわたる展望を持ってコントロールを行う必要があると考える。
  • 栗原 洋一, 大林 克行, 赤羽 康彦, 平澤 正知
    1983 年 21 巻 3 号 p. 463-467
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    マウスおよびヌードマウスを用いて実験齲蝕が胸腺の有無により動物の生体にどのような反応を起こすかについて検索した。供試マウスの口腔常在菌叢を抗生剤前処理により抑制したのち,Streptococcus mutans PS-14および6715を接種し,Diet 2000を与え105日間飼育した。そして麻酔後心穿刺により血液を採取し,血清に分離したのち血清中の免疫グロブリンをSRID法により測定した。その結果血清中のIgG,IgA,IgMの感染群の値は非感染対照群に比較し,普通マウス,ヌードマウスとも大きな変化はみられなかった。なおヌードマウスについてはとくに屠殺後歯垢中のS.mutansを定量的に培養,集落数より感染菌数を算定し,さらに齲蝕スコアを算出したが,ヌードマウスで齲蝕は顕著に誘発され,齲蝕スコアの血清型間における差異はみられず,屠殺時の感染菌数においても血清型間に大きな差異はみられなかつた。
  • 小出 武, 尾崎 貞宜, 黄 純徳, 有田 憲司, 中村 弘之, 河原 茂, 南郷谷 修, 奥田 正計, 稗田 豊治, 志田 享, 金子 敦 ...
    1983 年 21 巻 3 号 p. 468-476
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    ジアゼパムの静脈内投与は効果が迅速で強力であることから歯科治療時の鎮静法の一つとして頻繁に使用されている。しかし,心身障害児(者)や非協力的な小児を対象とする場合には静脈路の確保が困難な場合が多い。一方,直腸内投与は投与操作が比較的簡単で,強い鎮静効果を示すことから,このような非協力児に対しては有効と考えられる。
    本研究は直腸内投与用ジアゼパム溶液を障害児(者)および非協力児35名,66症例に鎮静法として応用し,同剤の鎮静効果を判定した°
    1.直腸内への投与は容易で,平均1分1秒で投与を完了した。また,効果の発現時間のバラツキは少なく,平均8分42秒と短時間であった。
    2.歯科治療時の鎮静度を客観的に判定したところ,著効が24.2%,有効が37.9%,やや有効が22.7%,そして無効は15.2%であった。
    3.脳性麻痺児の不随意運動の抑制は著明であった。また,比較的理解力のある患児に対しては強い鎮静効果を認めた。逆に,健常児でも低年齢児で理解力が低い場合には鎮静効果は弱かった。
    4.投与後に便意を訴え,さらに排便したものが認められ,帰宅途中に過半数がふらつきを訴えた。帰宅後は施術の翌日までむずかる,寝つきが悪いおよび食欲不振などを訴えるものを認めた。
  • 浜野 良彦, 二木 昌人, 田北 恵子, 中田 稔
    1983 年 21 巻 3 号 p. 477-482
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳前歯の多歯面にわたる歯冠修復法として,コンポジットレジンを用いたジャケット冠(CR冠)が多用されているが,これと対咬する健全乳前歯に著明な咬耗がみられることがある。そこで,CR冠と対咬し異常咬耗が発現した脱落乳切歯と,自然咬耗のみられた脱落乳切歯の咬耗面を,実体顕微鏡および走査型電子顕微鏡を用いて,その微細構造を比較観察した。また,従来型コンポジットレジンとマイクロフィラータイプのコンポジットレジンを用いて,健全乳切歯の摩耗試験を行ったところ,フィラーの大きい従来型のコンポジットレジンを用いた場合,被験歯に著明な摩耗がみられたが,マイクロフィラータイプの場合には,摩耗がみられなかった。
  • 天野 秀昭, 香西 克之, 信家 弘士, 長坂 信夫
    1983 年 21 巻 3 号 p. 483-490
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    窩底と歯髄腔間に残存する歯質の厚径および性状を客観的に把握することは小児歯科臨床において重要なことであり,電気抵抗値を用いた診断法が研究され臨床に応用されている。
    本研究では同一の歯牙に順次深くした窩洞形成を行い,窩底下残存歯質厚径の変化と電気抵抗値との関係について検討した。
    試料は本学小児歯科外来を訪れた小児の交換期をむかえた健全な乳歯計52歯であり,抜去後ただちに試片を作製し実験に供した。
    試料には順次深くした窩洞形成を行ない,そのつど窩底下残存歯質厚径およびカリエスメーターによる電気抵抗値の測定を繰り返し,1歯平均8.5ポイント計443ポイントにおける計測値を得た。
    その結果,象牙質内窩洞においてはほとんどの試料が600kΩ 以下の電気抵抗値を示し,またすべての試料で窩底下残存歯質厚径の減少に伴い電気抵抗値も減少を示し,減少傾向にも試料間に類似性が認められた。しかし同一の電気抵抗値に対する窩底下残存歯質厚径の値には試料間に1SD約320μ のばらつきがあり,原生象牙質層のみとした試料の値1SD約180μ と比較し,大きな試料間の差を認めた。このことから,残存歯質の,特に歯髄側象牙質の性状が電気抵抗値に大きな影響を与えていることが示唆された。
  • 高橋 利近, 柳 治夫, 高木 慎, 高松 英也, 角南 考昭, 高谷 康男
    1983 年 21 巻 3 号 p. 491-496
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    無汗型外胚葉異形成症は,無汗症,発毛不全および無歯症を3主徴とし,通常,外胚葉性起源の他の組織,器官にも発育不全を伴う疾患であり,伴性劣性遣伝を示すといわれている。従って圧倒的に男性に多く発現し,女性においてその典型的な発症をみることは稀であるが,保因者の女性にも歯の先天性欠如や形態異常,軽度の鞍鼻や部分的な無汗などが現れることがある。
    最近,われわれは無汗型外胚葉異形成症による部分性無歯症の1例を経験したので報告する。患者は12歳1ヵ月の女児で,広い前額,口唇の外翻,鞍状鼻などの特徴的な顔貌を呈しており,皮膚の組織検査において汗腺の低形成が認められた。また,永久歯では18歯の先天性欠如がみられ,セファロ分析では上顎骨の劣成長がみられた。処置として義歯により咀嚼,発音および審美的問題の改善を行い,現在尚経過観察中である。
  • 大野 秀夫, 河崎 浩之, 永井 真弓, 吉元 辰二, 塩野 幸一, 森主 宜延, 小椋 正
    1983 年 21 巻 3 号 p. 497-507
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Silver-Russell Syndromeは,原発性の小人症であり,歯科領域においては発育不全からくる咬合異常あるいは重症齲蝕などの問題が報告されている。
    著者らは,鹿児島大学歯学部附属病院小児歯科外来(症例1),又,慶応義塾大学医学部歯科口腔外科外来(症例2)を訪れ,Silver-Russell Syndromeと診断された女児2名について,口腔領域の診査に基づく発育変化ならびに歯科的所見を報告する。
    1)手根骨部の発育評価において,いわゆるcatch up growth現象が認められた。
    2)顎骨の発育不全ならびに上下顎の発育の不調和からくる咬合異常がSilver-Russell Syndromeの歯科的特徴として示された。
    3)齲蝕罹患については,一般健常児と同様に食生活の問題によって重症化していることが示唆されたことから,歯科的な定期管理が必要であると思われた。
    4)咀嚼筋機能については,本症としての特性を見い出すことはできなかった。
  • 栗原 洋一, 内藤 敏幸, 鈴木 伸之, 茶園 恵
    1983 年 21 巻 3 号 p. 508-514
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯列中における癒合歯や双生歯についてはすでに多くの報告がみられるが,乳歯列中の3歯が癒合した症例は少ない。
    今回,著者らは本学小児歯科部に来院した2歳9ヵ月の男児(症例I)と4歳8ヵ月の女児(症例II)に過剰歯を含め,3歯が癒合した双生癒合歯ともいうべき極めて稀れな症例に遭遇した。
    家族歴:2症例とも同胞に歯冠形態の異常を認める。その他に特記すべき事項はない。
    既往歴:症例Iは特記すべき事項はない。症例IIは母親が妊娠前期に十分な食品摂取ができなかった。他に特記すべき事項はない。
    口腔内所見:症例IはBAと過剰歯の3歯が癒合している。すべての歯に齲蝕はなく,軟組織の異常もない。Bが舌側転位し,下顎乳前歯部は叢生を呈す。症例IIはCBと過剰歯の3歯が癒合している。また,BCも癒合している。すべての歯に齲蝕はなく軟組織の異常もない。前歯部被蓋は深い。
    X線所見:双生癒合歯部の後継歯は,現段階では,症例Iは乳中切歯,症例IIは乳犬歯に対応する歯が観察されるのみである。症例IIの左側癒合歯の後継歯に欠如はない。
    現在,経過観察中であり,将来脱落時には形態学的ならびに組織学的検索を行なう予定である。
  • 森高 久恵, 木村 光孝, 中村 嘉明, 松山 道孝, 住本 和隆, 篠崎 英一
    1983 年 21 巻 3 号 p. 515-522
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    著者らは,初診時4歳9ヵ月,Hellman's Dental Age II Aの女児において,既に4歯芽の早期萌出と,動揺による咀嚼障害を主訴として来院した症例に遭遇した。歯芽は舞踏状に動揺し,脱落寸前であった。電気診(一),X線診査で歯根形成が認められないため,保存不可能と判断し歯芽を除去した。
    歯芽のエナメル質表面は一部褐色を呈している部分があり,エナメル質形成不全であると思われた。除去した歯芽を2分割し,一方は未脱灰研磨切片を作製し光顕的観察に,もう一方は走査電顕的観察に用いた。光顕的にはエナメル質,象牙質ともに形成不全像を呈し,電顕的には肉眼像で褐色を呈する部分にpitsが散在し,構造は粗造でエナメル質低石灰化像を呈していた。低石灰化部と健全部のエナメル質をX線マイクロアナライザーで分析すると,定性的には全く差異を認めなかった。歯芽と同時に歯芽直下の歯槽内より摘出した軟組織の病理組織所見は慢性肉芽性炎症であった。本症例の発生原因を文献的考察と合わせて探ってみた結果,先行乳歯への影響が永久歯歯芽に及び,歯芽が壊死に陥ったため異物排除機転が働いたものと考えられる。
  • 浜野 良彦, 田北 恵子, 立川 義博, 中田 稔
    1983 年 21 巻 3 号 p. 523-527
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    齲窩の客観的診断法の1つとして,電気抵抗値を応用したカリエスメーターがある。1967年に鈴木らがその有効性を発表して以来改良が重ねられ,抵抗値の表示がアナログ式からデジタル式へと発展し,最近では点灯するランプの色によって齲蝕の進行程度を判定する,ランプ指示式カリエスメーターが開発されている。
    今回,このランプ指示式カリエスメーターの小児患者における臨床的実用性を評価する目的として,従来のアナログ式カリエスメーターにより得られた電気抵抗値と,同一条件下で得られたランプ指示式カリエスメーターのランプの色との比較検討を行った。その結果,ランプ表示と電気抵抗値の実測値との対応関係が高いことが,明らかにされた。この装置が軽量小型化されているため操作性が良いことから考えると,ランプ指示式カリエスメーターの臨床的実用性は高いものと思われた。
  • 親里 嘉健, 有田 憲司, 年梅 旭, 川村 広
    1983 年 21 巻 3 号 p. 528-536
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    大阪歯科大学附属病院小児歯科外来で,アミノ安息香酸エチルが主剤のビーゾカイン・ゼリーの表面麻酔効果をinactive placeboを対照に,3歳から19歳までの男女102名で検討した。そのうちビーゾカイン・ゼリー62例,Placebo 26例が解析対象となった。
    1)ビーゾカイン・ゼリーの表面麻酔効果は有効率74.2%,Placeboの有効率は50.0%で,両剤間の局所麻酔効果には有意な差が認められた(U-test,X2-test)。
    2)全身的ならびに局所的副作用は全例において全く認められなかった。
    その結果,ビーゾカィン・ゼリーは麻酔発現時間が短く,ゼリー状の剤型のため薬剤の流出がなく操作性が良好で,使用時の違和感が少ないことから小児歯科領域における表面麻酔剤として有用性の高いものであるといえる。
  • 1983 年 21 巻 3 号 p. 539-618
    発行日: 1983/09/25
    公開日: 2013/05/14
    ジャーナル フリー
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