小児歯科学雑誌
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第2乳臼歯の早期喪失と永久歯列不正間の因果関係についての経時的研究
森主 宜延吉元 辰二大野 秀夫永井 真弓小椋 路子小椋 正
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1983 年 21 巻 4 号 p. 670-682

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抄録
第2乳臼歯を含めた乳臼歯の早期喪失は,咀嚼機能の低下,永久歯列不正への影響,そして顎態の成長発育への影響をも与えると考えられてきた。特に永久歯列不正への影響は保隙という,小児歯科臨床において重要な位置づけがされている。近年のいわゆるdiscrepancyを考え方の軸として,乳臼歯め早期喪失が永久歯列不正に対して,何を意味するのか検討し,早期喪失が,すなわち永久歯列不正の大きな要因になり得ないこと,更にこの決定因子は,いわゆるdiscrepancyであるとの報告がされた。この報告は,今後の保隙の診断ならびに検討に対する標的を示すと共に,現在,行なわれている保隙処置への警告でもある,重要な問題を提示した。
そこで著者らは,上記の報告を確認する必要性を認め,同様な資料に基づき,総合的な検討を行ない,次の結論を得た。
1)第2乳臼歯の存在状態と永久歯列不正との有意の関係は示さなかった。
2)第1大臼歯の移動型は,第2乳臼歯の早期喪失,あるいはTweedによる値とも有意な関係を示さず,永久歯列不正の主な決定因子とは考えにくい。
3)Tweedに基づくdiscrepancy評価からは,永久歯列不正が,いわゆるdiscrepancyに由来するのか決定できなかった。しかしA.L.-R.A.L.の関係ならびに顎態の距離的関係から,いわゆるdiscrepancyが歯列不正を決定する大きな因子であることが示された。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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