抄録
1歳6ヵ月児歯科健診の保健指導内容の充実を計り,効果的な歯科健診法を確立することを目的として,岩見沢,盛岡,仙台,杉並,横須賀,茨木,徳島,広島,福岡の9地域において1歳6ヵ月児歯科健診を実施し,同一対象児を3歳6ヵ月まで追跡し,6ヵ月ごとに口腔診査および質問紙による生活環境調査を同一の方法に従って行なった.各々の診査時点の質問紙解答ならびに口腔診査の成績によって被検児を群別し,口腔習癖の発現状況と齲蝕罹患および咬合の状態との相互関係について検討し,以下の結果を得た.
1.「指しゃぶり」保有者群の齲蝕罹患者率は,すべての年齢時で非保有者群のそれよりも統計学的有意に低かった.
2.「何かくわえて寝る」習癖保有者群の齲蝕罹患者率は,2歳6ヵ月以降つねに非保有者群のそれよりも低かったが,一部に統計学的有意差を認めたに過ぎなかった.
3.「母乳を飲みながら寝る」習癖保有者群の齲蝕罹患者率は,すべての年齢時で非保有者群のそれよりも高く,1歳6ヵ月~2歳6ヵ月で統計学的有意差を認めた.
4.反対咬合をもつ小児では,「唇をよくすう」習癖保有者率が2歳0ヵ月,2歳6ヵ月および3歳6ヵ月で正常咬合者のそれよりも統計学的有意に高かった.
5.開咬および上顎前突をもつ小児では,「指しゃぶり」と「何かくわえて寝る」習癖保有者率が殆どの年齢時で正常咬合者のそれらよりも統計学的有意に高かった.