1984 年 22 巻 4 号 p. 871-882
著者らは,E根尖相当部の疼痛を主訴として来院した,10歳の女児に発生したodontomaが後継永久歯の萌出を阻害したと思われる症例に遭遇した.E歯槽部歯肉は健康色を呈していたが,触診により圧痛を認めた.X線診査によりE根尖相当部に2個の境界明瞭なX線不透過像を認め,その塊状物によって5は萌出を妨げられ埋伏していた.そこで2個の腫瘤を摘出し,病理組織学的検索および電子顕微鏡的検索を行った結果,compound odontomaと診断した.術後,expansion screwを応用したspace regainerを装着し定期的な観察を続け,約8ヵ月後5は咬合平面に達するまで萌出し,歯根周囲の歯槽骨は明瞭となった.現在,同歯は骨植堅固で,充分な咬合機能を営んでおり,予後は良好である.