小児歯科学雑誌
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カニクイザルの犬歯部歯帯孔に関する研究
羽切 惠美子
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1985 年 23 巻 1 号 p. 111-135

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抄録

乳歯歯槽窩内壁に開口する犬歯部歯帯孔に着目し,カニクイザルを用い肉限的,組織学的に観察し,以下の知見を得た。
胎生期初期の歯胚は口腔粘膜上皮と幅の広い歯堤で連なっているが,次第に乳犬歯歯胚の舌側にある犬歯歯胚の周囲に多くの間葉細胞と線維が増殖し,骨包を形成する。乳犬歯萌出開始期の歯帯孔は乳歯歯槽窩内壁に開口するが,乳犬歯萌出完了期の歯帯孔は歯槽骨表面から認められるようになり,歯帯管外側壁は内側壁より低い。やがて歯帯孔は乳歯歯槽窩内壁より歯槽縁に出現し,2つの出現形態に分かれる。歯帯孔が乳歯歯槽窩と歯槽骨を介して開口するものは歯帯管外側壁の歯根膜側に骨芽細胞を認め,内側壁とほぼ同じ高さである。歯帯孔の一部が乳歯歯槽窩に開口するものは開口部に破骨細胞を認め,内側壁より下方にある。犬歯の萌出が近くなると歯帯孔は拡大し,歯帯管は太く短くなり,その内側に犬歯尖頭をみる。歯帯管内の内層は歯帯の残存上皮がある緻密な結合組織からなり,外層は毛細頚皿管が散在する疎な結合組織からなる。歯帯孔が乳歯歯槽窩に開ロする割合は下顎より上顎が多い。
以上のことから,犬歯部歯帯孔は切歯部歯帯孔から小臼歯部歯帯孔への移行型であり,歯帯孔および歯帯管は歯胚の侵入路でもあるとともに,代生歯の萌出路でもあることが確かめられた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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