抄録
主にX線による観察によって,吸収性があるとされている根管充填剤ビタペックスについて,X線写真上におけるその消失が実際の吸収消失と対応しているのか否かを調査するために,ビタペックスをラットの皮下に埋没し,経時的なX線撮影を行ない,また回収した局所残留物について核磁気共鳴分析装置,赤外線分光分析装置を用いて定性的,定量的にシリコーンオイルの追跡を試み以下の結論を得た。
1)埋没後2-3週間でビタペックスはそのX線造影性を失うが,その局所には白い粗造な残留物が存在しており,その分析結果からこの残留物はシリコーンオイルを含む事が示され,X線造影性の消失をもってビタペックスの吸収消失とすることはできない事が明らかになった。
2)残留物中のシリコーンナイルの定量的な調査で,シリコーンオイルは3ヵ月後でもほぼ100%残留している事が明らかになった。
3)埋没後2週目において,残留したビタペックス中には炭酸カルシウムが存在していたが,その成分の1つである水酸化カルシウムは検出されなかった。この事からビタペックス中の水酸化カルシウムは皮下において中和され炭酸カルシウムとなるものと推察された。