小児歯科学雑誌
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ダウン症候群の歯科学的研究 第1報 乳歯萌出
武田 康男堀内 信子中田 稔
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1985 年 23 巻 2 号 p. 299-307

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抄録

ダウン症候群は,子宮内胎児期から出生後の長期間の成長過程において,身体と精神両面における顕著な発達の遅れを大きな特徴とする染色体異常である。本研究は,ダウン症候群児48名(トリソミー型男児25名,トリソミー型女児18名,モザイク型男児5名)のsemi-longitudinal資料をもとに,本症の歯牙発育の遅れの特徴と染色体核型が歯牙,身長,体重発育に及ぼす影響について検討し考察を加えたものである。歯牙所見は,月齢9ヵ月から42ヵ月の萌出資料に基づいて歯種別の乳歯萌出月齢を,アルジネート印象模型から乳歯歯冠近遠心幅径値を求めた。萌出月齢は,身長,体重値とともにstandard scoreに変換した。以上の項目に関して,核型の影響を検討した。歯冠幅径値もstandard scoreに変換し,歯種間の比較を行った。以上の検討の結果として次の点が明らかとなった。
1)すべての歯種に関して,ダウン症候群は対照群に較べて,乳歯萌出の顕著な遅れが認められるが,前歯部の萌出の遅れがとくに大きい特微が判った。
2)乳歯歯冠幅径値は,i2とm2を除いて,ダウン症候群が対照群より大きい結果が得られた。
3)核型による発育の差が認められたのは,乳歯萌出であり,トリソミー型ダウン症候群の萌出の遅れが顕著であった。
身体各部における発育の遅れの検討は,ダウン症候群の病態や胎児期発育の特徴の解明に糸口を与えると考えられる。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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