抄録
小児義歯(可撤保隙装置)は,咬合誘導の一手段として位置づけられ,機能的保隙装置の代表として,臨床応用されているが,未だ解決されていない問題点が多く残されている。その中でも,小児義歯の咀嚼能力の回復に関する報告は少ない。
著者らは,この点に関して,Hellmanの咬合発育段階IIA期およびIIC期の小児義歯装着患児17名について装置を撤去した状態(以下非装着時と省略)と挿入した状態(以下装着時と省略)について,筋電図の積分処理を行い検討し,以下の結論を得た。
1)総活動電位において,IIAでは,装着時は非装着時に比較し減少傾向を示したが,IICでは,ほぼ同程度であった。
2)側頭筋前部,側頭筋後部および咬筋浅部の総括動電位に対する百分率を検討すると,装着時は非装着時と同様の筋活動パターンを示した。
3)非装着時の総活動電位に対する装着時の総活動電位の比率を検討すると,IIAでは装着時は非装着時に比較し,減少傾向を示したが,IICでは増加傾向を示した。
4)小児義歯装着による咀嚼能力の回復は,装置の安定性にも左右されると思われた。しかし,歯齢の上昇とともに向上し,第1大臼歯の咬合状態によって,著明に咀嚼能力が回復すると考えられた。