小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
血友病A患者の出血管理-APTT, TEGの有用性について-
渡部 茂伊藤 総一郎五十嵐 清治板本 充志原田 尚也金澤 正昭佐藤 雅寛男安河内 太郎
著者情報
キーワード: 血友病A, 第VIII因子量, APTT, TEG
ジャーナル フリー

1985 年 23 巻 3 号 p. 760-768

詳細
抄録

血友病A患者に対する出血対策には,一般に第VIII因子濃縮製剤輸注のもと,第VIII因子定量を併用した患者管理が行なわれている。今回我々は本学小児歯科外来を紹介された血友病A患者2名の歯科治療を行うに際し,第VIII因子濃縮製剤Conco-eightに対する輸注試験を行い,APTT,TEGの値から第NIII因子量の推定を試み以下の知見を得た。1)輸注試験の結果,第VIII因子量の反応は良好で,またAPTT,TEG(r+k)僅は第VIII因子量の増減に伴って変化を示した。2)APTT活性値と第VIII因子量の相関は高く,両症例とも危険率0.1%で正の相関を示した。またTEG(r+k)値も同様に危険率0.1%で負の相関を示した。3)症例間に多少の変動が認められたことから,APTT活性値,TEG(r+k)値より直ちに第VIII因子量を推定することは難しいと思われた。しかし,APTT活性値の正常値下限(70%),およびTEG(r+k)値の正常値下限(18分)に相当する第VIII因子量を検討した結果,前者は約30%,後者は約20%の値を示し,出血に影響のない第VIII因子レベルをベットサイドにて迅速に把握する1つの手段として,APTT,TEGは有用性の高いことが示唆された。

著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top