小児歯科学雑誌
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象牙質形成不全症(Dentinogenesis imperfecta)の乳歯の組織化学的研究
高木 裕三三輪 全三小野 博志佐々木 哲
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1986 年 24 巻 2 号 p. 285-291

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抄録

象牙質形成不全症(Dentinogenesis imperfecta)は特異的に象牙質の形成が障害される遺伝性の疾患である。本疾患の臨床病理学的特徴は多くの報告からかなり明らかにされているが,病因はまだ解明されていない。
本研究では,新しく開発した象牙質リン蛋白質の染色法を用いて,健常児および4名の象牙質形成不全症の患者から得た抜去乳歯を組織化学的に観察した。その結果,象牙質リン蛋白質は正常乳歯の髄周象牙質に広く分布していることが示され,一方象牙質形成不全症の象牙質では欠乏していることが示された。さらに,本症では象牙質外層部にオウエンの外形線やトームスの顆粒層とは異なるがやはり形成障害部と思われる線条または顆粒層が存在することも示された。
これらのことから,本疾患ではエナメル上皮細胞により誘導された象牙芽細胞の寿命が著しく短縮され,これらの細胞が死滅した後に歯髄由来の未熟な細胞が象牙質を形成するものと考えられる。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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