小児歯科学雑誌
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上顎犬歯欠如および第二乳臼歯埋伏の1例
栢原 千鶴木村 光孝加藤 信彦粟生 悟井手口 盡鰺坂 一郎
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1986 年 24 巻 3 号 p. 495-507

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抄録
著者らは, E 萌出遅延を主訴として来院した6 歳0 カ月女児に対しX 線診査を行った結果,Eは歯冠,歯根ともにほぼ完成された状態で顎骨内に埋伏しているのを認めた。また,E歯根分岐部下に後継永久歯胚は存在せず,E遠心部と6近心根の間にやや矮小化傾向のある永久歯胚がみられ,さらに3|3歯胚の先天的欠如も認めた。
患児の既往歴,家族歴に特記すべき事項はなく,初診時の全身状態,口腔内所見においてもE未萌出以外,特に異常はみられなかった。
本症例の原因としては,異常位置に発生したE歯胚が萌出力を伴わず歯根形成を完了したまま顎骨内に停留したため,その後継永久歯胚は正常な移動を行えず遠心寄りに位置するようになったと考えられる。しかし一方, 抜去したEの病理組織学的検索によりEにはAnkylosisが認められることから,Eはかつて萌出しており,何らかの機転で低位を占めるに至り周囲組織に囲まれるようになった低位乳歯の可能性も否定できない。
また,歯髄組織は硝子変性,石灰変性に陥っていることが確認され,Ankylosisとこれらの退行性変化の興味ある関連性もうかがえた。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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