小児歯科学雑誌
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日本小児歯科学会近畿地方会会員の障害者歯科診療の実態
西田 百代道家 臻金森 市造岡本 誠増田 典男谷 京子杉山 恵子祖父江 鎮雄
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キーワード: 障害者, 実態調査, 地域医療
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1986 年 24 巻 3 号 p. 508-517

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抄録

障害者歯科に関して地域の医療供給側の実態を調べるために,小児歯科学会近畿地方会会員(295人)にアンケート調査を行った。回答を寄せたのは97人で,分析結果は以下のようである。
1)診療所に来院する患者の実態-患者数では,よく来る16%,ときどき来る60%,めったに来ないが24%で,障害別では精神発達遅滞が最も多く,次いで脳性麻痺,自閉症,心疾患,聾,盲,脳卒中,脊損の順であった。来院理由では,以前から治療をしている患者の家族であるからというのが一番多かった。
2)障害患者を受け入れるための配慮,診療室の設計,設備-予約時間の長さと時間帯などの配慮はあまりされていなかった。車椅子患者の来院に際して,設計上問題ないというのが48%あった。開口器,抑制装置を有するもの70%であった。
3)障害者に対する歯科医自身の意識と診療内容-95%のものは障害患者の治療に理解を示した。障害が軽度の場合は,一般患者と同じ治療が行われていたが,重度になると診療内容の低下あるいは他の医療機関へ紹介される割合が高くなった。
4)障害者歯科に関しての他の医療機関での臨床経験と研修-70%のものが臨床経験を有し,55%のものは研修を受けていた。
5)障害者歯科に関する大学教育のあり方と大学病院の果たすべき役割-障害者歯科は学生教育の中に含めるべきで,大学病院は三次医療機関としての役割があるという回答が多かった。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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