小児歯科学雑誌
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24 巻, 3 号
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  • 黒田 政文, 武田 泰典
    1986 年 24 巻 3 号 p. 409-414
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    従来から永久歯の歯髄内石灰化物については多くの検索がなされているものの,乳歯歯髄における石灰化物の出現状況の詳細については未だ知られていない。そこで筆者らは歯根の吸収程度1/2~1/4の上下顎第一・第二乳臼歯計50歯を用いて歯髄内石灰化物の出現状況を検討した。その結果,真性象牙質粒は14%,仮性象牙質粒は28%,石灰沈着は74%に認められた。また,それぞれの石灰化物は他の石灰化物と混在してみられることが多かった。
    以上の結果から,乳歯歯髄内に石灰化物の出現をみることは決してまれではないと考えられた。また,咬耗の程度と歯髄内石灰化物の出現状況の比較も行った結果,仮性象牙質粒と石灰沈着は咬耗の高度なものに多くみられる傾向にあった。
  • 叢生者の咀嚼筋活動量について
    旭爪 伸二, 住 和代, 甲斐 正子, 川崎 広時, 大野 秀夫, 小椋 正
    1986 年 24 巻 3 号 p. 415-427
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    叢生者の咀嚼機能を数量的に評価することを目的に筋電図学的研究を行った。被検者は無齲蝕か比較的単純な充填処置の終了した骨格型の不正を伴わない叢生の小児で,Hellmanの咬合発育段階II AからIII Cまでの各10名,計50名である。側頭筋前部(TA),側頭筋後部(TP),咬筋浅部(M)の左右両側を被検筋としてガム自由咀嚼,ピーナツ自由咀嚼,マシュマロ自由咀嚼,および最大かみしめの4つの規定動作を行わせた。記録した筋電図は積分処理を行い,被検筋相互間の活動量を知るために,総活動電位を100%として各筋のTA%,TP%およびM%を算出した。それらの評価を対照群であるいわゆる正常咬合者50名と比較した結果,以下の結論を得た。
    1)叢生者は,対照群と比較して咬合発育段階の進行に従うTAの総沽動電位に占める割合の減少の程度ならびにMの増加の程度は小さかった。
    2)その結果,叢生者は全ての咬合発育段階においてTAが優位に働いていた。
    3)叢生者群と対照群は,上下顎の相対的位置関係において,骨格形態は同様の状態を示していることから,筋電図積分値による両者の相違について,上下顎歯牙の接触関係が,咀嚼筋活動量に与えるひとつの要因と考えられた。
  • (II) ライトガイド方式色差計CD-270型による測色
    細矢 由美子, 後藤 譲治
    1986 年 24 巻 3 号 p. 428-437
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    客観的に乳歯の歯冠色を測色する事を目的に,村上色彩技術研究所製ライトガイド方式色差計CD-270型を使用し,2歳4カ月から6歳5カ月(平均年齢4歳3カ月)の小児30名の健全乳前歯の測色を行った。そして,日本電色社製Color and Color Difference Meter 1001DP型を使用した場合との比較を行うと共に,乳歯歯冠色の測色を行う際の問題点について検討した。実験の結果,下記の結論を得た。
    1)CD-270型は,色差計内部に濾波器を備えている為,外光による影響を受ける恐れがない。また,測色に要する時間も1001DP型に対し有意に短い。これらの点は,口腔内で測色を行う上で望ましい。
    2)a bについては,CD-270型による測色平均値は,どの歯種についても正の値をとり,赤味がかった帯黄色を示したのに対し,1001 DP型の結果は0に近く,極めて白に近い結果であり,歯種による差はほとんど認められなかった。この点について,CD-270型は,ライトガイドの先端の直径が大きい為,歯肉色の影響を受けている恐れがあり,先端を小さく改良する必要がある。他方,1001 DP型の結果は,エナメル質の表面色のみをとらえている恐れがあり,歯牙本来の色の検出という点で疑問があり,明度のみしか検出されていない恐れがある。
  • 1.咬合面窩洞の幅径および深度の影響
    嘉藤 幹夫, 河原 茂, 近森 槇子, 渡辺 道雄, 宮崎 健, 稗田 豊治
    1986 年 24 巻 3 号 p. 438-449
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯修復時における窩洞の設計,すなわち,その幅径や深度が修復物の脱離,破損および歯質の破折や歯髄への疼痛にも大きな影響を与えることに着目し,有限要素法により,歯質および修復物内の変位や応力を解析検討した。
    乳歯の二次元有限要素モデルは,下顎第二乳臼歯の歯冠部頬舌的断面を基準とし,窩洞は咬合面1級窩洞で,コンポジットレジン(以下レジンと略す),銀錫アマルガム(以下アマルガムと略す)および金合金インレー(以下インレーと略す)の各修復材料を通法に従って充填したものとし,変位図および応力図を作図させ,さらに節点の変位量と主要なareaでの相当応力について比較検討した結果,修復物周囲の変位は,窩洞が深くなるほど,また,窩洞の幅が広くなるほど変位量は低くなり,インレーが最もその変化が少ないことを認めた。歯髄腔の変位は,レジンとアマルガムで窩洞が深くなるほど変位量が高くなるが,インレーは,逆に低くなることを認めた。修復物内の応力は,修復物内に集中し,歯質内の応力はむしろ低くなることを認めた。修復物直下の応力は,レジンやアマルガムでは,応力が高くなるが,インレーは,逆に低くなることを認めた。さらに歯髄内の応力は,かなり低いことを認めた。
  • 第1報 発現頻度と年次推移
    横井 勝美, 山内 哲哉, 鈴木 善子, 福田 理, 黒須 一夫
    1986 年 24 巻 3 号 p. 450-458
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の口腔習癖の発現頻度と年次推移を知る目的で1976年1月から1985年12月までの10年間に愛知学院大学歯学部附属病院小児歯科外来を訪れた小児を対象に調査し,以下の結果を得た。
    1)何らかの口腔習癖を有する小児は,4,159名中1,596名(38.4%)であった。
    2)口腔習癖の発現頻度は,吸指癖20.0%,咬爪癖7.8%,歯ぎしり7.0%,ものかみ癖4.6%,咬唇癖2.1%の順であった。
    3)年齢群別に,各習癖の年齢的傾向をみると,増齢的減少傾向を示すのは吸指癖,増加傾向を示すのは咬爪癖と歯ぎしり,年齢的変化の少ないものはものかみ癖と咬唇癖であった。
    4)各習癖ごとに10年間の推移をみると,(1)増加傾向を示したのは,幼児後期の吸指癖と咬爪癖,学童期の咬爪癖と歯ぎしりであった。(2)減少傾向を示したのは,幼児前期では咬爪癖,ものかみ癖であった。幼児後期では,ものかみ癖,咬唇癖,学童期では吸指癖,咬唇癖であった。
  • 水酸化カルシウム系糊剤によるapexificationについて-
    宮新 美智世, 石川 雅章
    1986 年 24 巻 3 号 p. 459-467
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    根未完成永久歯が外傷を受けることにより歯髄炎や歯髄壊死などをきたし,抜髄もしくは感染根管治療を要するに至った場合,根管充填に先立ち水酸化カルシウム系糊剤によるapexificationか行われる。このような歯のうち上顎中切歯56歯について,平均3年8カ月の経過観察を行った。
    1)水酸化カルシウムー蒸留水糊剤を22歯に,水酸化カルシウムーCMCP糊剤を16歯に充填し, それぞれ3~4カ月ごとに糊剤を交換したところ, 3 年1 カ月までに水酸化カルシウムーCMCP糊剤を充填した1歯をのぞいて根尖部閉鎖が認められた。また,根尖部閉鎖には,抜髄・感染根管治療開始時の被験歯の根尖孔開大程度や,抜髄根管と感染根管との相違による影響がうかがわれた。
    2)“VITAPEX”を充填した18歯においては,平均2年9カ月後に同剤を除去したが,X線写真上で根尖部閉鎖がうかかわれる歯でもファイルによる触診で根尖部閉鎖を認めえたのは4歯のみであった。さらに除去時までに“VITAPEX”のX線造影性の一部消失がみられ,また,除去された同剤には軟化や着色が認められた。
  • 脳波,眼球運動,筋電図,呼吸曲線を指標として
    中島 一郎, 高須賀 三郎, 酒井 貫充, 岩田 夏彦, 広瀬 由治, 大西 敏雄, 高梨 登, 武井 謙司, 前田 隆秀, 赤坂 守人
    1986 年 24 巻 3 号 p. 468-474
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯科臨床において笑気吸入鎮静法を用いた際の患者の鎮静徴候を,ポリグラフとして記録し,かつ定量的分析を試みる事を目的とし,その臨床応用前に,8人の健康成人男子を対象として30%笑気70%酸素ガスを吸入させ予備的に分析,検討した。今回は脳波,眼球運動,筋電図,呼吸曲線の4指標について行った。その結果は以下の通りであった。
    1)脳波は前頭部から導出し,フーリエ変換によりパワーの百分率として分析した。笑気吸入9分内に一過性に有意な変動を認めた。
    2)眼球運動は水平方向の運動を導出し,その出現個数を算出した。笑気吸入3分から9分にかけ,また,25分から30分にかけ有意に減少した。
    3)筋電図は,オトガイ筋電図を用い積分値として評価した。笑気吸入10分以降は安定していた。
    4)呼吸曲線は,呼吸数として算出した。笑気吸入中は,比較的安定していた。
  • 第1報 再現性について
    笹井 浩司, 市橋 正昭, 朝倉 恒夫, 蒲生 健司, 吉安 高左郎, 伊藤 裕一郎, 宮田 友晴, 田村 康夫, 吉田 定宏
    1986 年 24 巻 3 号 p. 475-482
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児3名と成人3名を用い,筋電図波形FFT(Fast Fourie Transform)解析法の再現性について検討した。計測項目は安静位,咬合力計咬合時,クレンチング時およびタッピング時における各筋活動の1 ) 周波数域( Frequency range) , 2 ) 最大ピーク周波数(Peak Hz),3)最大ピーク強度(Peak dBV)で,各被験者とも同一項目で3日間にわたる実験を行った。その結果は以下の通りであった。
    1)小児および成人とも咬合力計咬合時,クレンチング時およびタッピング時における周波数域,ピーク強度値の日内変動及び日間変動は小さく,高い再現性が認められた。
    2)ピーク周波数は容易に変動しやすく,それ故両群ともに日内変動,日間変動が大きくなり,再現性に問題が認められた。
    3)咬合力計咬合時およびクレンチング時における周波数域,ピーク強度は咬合力増加に伴い両群とも上昇する傾向が認められ,また側頭筋と咬筋における比較を行った場合,小児では側頭筋が,一方成人では咬筋が優位な活動を示していた。
    以上の結果より,一部計測方法に再検討を要する項目もみられたが,全体を通しFFT解析は小児,成人の咀嚼筋活動を観察する上で有効であると考えられた。
  • 小児と成人のS-IgA濃度,S-IgA/総蛋白比率の比較
    酒井 貫充, 山田 博, 高須 賀三郎, 中島 一郎, 赤坂 守人
    1986 年 24 巻 3 号 p. 483-494
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    E.I.A.S-IgAテスト(M.B.L.社)の信頼性の検討を行い,健常者の混合唾液においてsecretory IgA(以下S-IgAと略す)濃度,S-IgA/albumin比率,S-IgA/総蛋白量(以下T.P.と略す)比率の日内変動を検討した。さらに小児51例,成人42例の混合唾液および成人27例の耳下腺唾液を採取しS-IgA濃度,S-IgA/T.P.比率を測定し以下の結論を得た。
    1)稀釈試験,添加回収試験,再現性試験より E.I.A.S-IgAテストは信頼性が高いことがわかった。
    2)唾液中のS-IgA濃度は唾液採取条件を厳密に規定しても日内変動が大きく,S-IgA濃度の日内変動を補正するためには,S-IgA/albumin比率は不適当であったが,S-IgA/T.P.比率は適当であった。
    3)小児(3~6歳)の唾液中のS-IgA濃度は成人に比較し有意に低い値であった。S-IgA/T.P.比率も同様である。
    4)S-IgA濃度,S-IgA/T.P.比率とも小児と成人において性差はみられなかった。
    5)混合唾液と耳下腺液のS-IgA濃度には相関はみられず,混合唾液の方が有意に高い値であった。S-IgA/T.P.比率も同様である。
  • 栢原 千鶴, 木村 光孝, 加藤 信彦, 粟生 悟, 井手口 盡, 鰺坂 一郎
    1986 年 24 巻 3 号 p. 495-507
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    著者らは, E 萌出遅延を主訴として来院した6 歳0 カ月女児に対しX 線診査を行った結果,Eは歯冠,歯根ともにほぼ完成された状態で顎骨内に埋伏しているのを認めた。また,E歯根分岐部下に後継永久歯胚は存在せず,E遠心部と6近心根の間にやや矮小化傾向のある永久歯胚がみられ,さらに3|3歯胚の先天的欠如も認めた。
    患児の既往歴,家族歴に特記すべき事項はなく,初診時の全身状態,口腔内所見においてもE未萌出以外,特に異常はみられなかった。
    本症例の原因としては,異常位置に発生したE歯胚が萌出力を伴わず歯根形成を完了したまま顎骨内に停留したため,その後継永久歯胚は正常な移動を行えず遠心寄りに位置するようになったと考えられる。しかし一方, 抜去したEの病理組織学的検索によりEにはAnkylosisが認められることから,Eはかつて萌出しており,何らかの機転で低位を占めるに至り周囲組織に囲まれるようになった低位乳歯の可能性も否定できない。
    また,歯髄組織は硝子変性,石灰変性に陥っていることが確認され,Ankylosisとこれらの退行性変化の興味ある関連性もうかがえた。
  • 西田 百代, 道家 臻, 金森 市造, 岡本 誠, 増田 典男, 谷 京子, 杉山 恵子, 祖父江 鎮雄
    1986 年 24 巻 3 号 p. 508-517
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    障害者歯科に関して地域の医療供給側の実態を調べるために,小児歯科学会近畿地方会会員(295人)にアンケート調査を行った。回答を寄せたのは97人で,分析結果は以下のようである。
    1)診療所に来院する患者の実態-患者数では,よく来る16%,ときどき来る60%,めったに来ないが24%で,障害別では精神発達遅滞が最も多く,次いで脳性麻痺,自閉症,心疾患,聾,盲,脳卒中,脊損の順であった。来院理由では,以前から治療をしている患者の家族であるからというのが一番多かった。
    2)障害患者を受け入れるための配慮,診療室の設計,設備-予約時間の長さと時間帯などの配慮はあまりされていなかった。車椅子患者の来院に際して,設計上問題ないというのが48%あった。開口器,抑制装置を有するもの70%であった。
    3)障害者に対する歯科医自身の意識と診療内容-95%のものは障害患者の治療に理解を示した。障害が軽度の場合は,一般患者と同じ治療が行われていたが,重度になると診療内容の低下あるいは他の医療機関へ紹介される割合が高くなった。
    4)障害者歯科に関しての他の医療機関での臨床経験と研修-70%のものが臨床経験を有し,55%のものは研修を受けていた。
    5)障害者歯科に関する大学教育のあり方と大学病院の果たすべき役割-障害者歯科は学生教育の中に含めるべきで,大学病院は三次医療機関としての役割があるという回答が多かった。
  • 棚瀬 精三, 堀口 浩, 蒲生 健司, 野原 義弘, 祖父江 英侍, 奥田 令以, 小泉 達哉, 生野 伸一, 藤居 明範, 高橋 雅子, ...
    1986 年 24 巻 3 号 p. 518-526
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    若年者の顎嚢胞に対する処置は,PartschのI法の変法と考えられる開窓療法が有効であるといわれている。
    今回,著者らは乳歯の根尖性歯周炎により永久歯胚のエナメル上皮に嚢胞化が起こって生じたと思われる6歳3カ月,7歳1カ月,7歳4カ月の小児の下顎小臼歯部に発現した含歯性嚢胞3例に対し,開窓療法を行った。
    3例中2例には術後,創の閉鎖防止を兼ねた可撤式保隙装置を装着して経過観察を行った。その結果,開窓療法後10~14カ月目に嚢胞はほぼ消失した。嚢胞腔内埋伏歯の萌出は1例に頬側傾斜を認めたが,他の2例はほぼ正常に歯列内に萌出した。また,歯髄は3例とも生活反応を認めた。嚢胞腔内埋伏歯の歯冠部には褐色の変色や白斑が認められ,これは乳歯の根尖性歯周炎によるエナメル質形成不全症の他,創腔内不潔による脱灰とも考えられた。歯根には彎曲が認められ,嚢胞内圧によって歯根に障害が現われたものと考えられた。
    3例の術後経過期間はそれぞれ8年1カ月,5年3カ月,1年2カ月であり,現在3例とも嚢胞は治癒し,再発傾向もみられず経過良好であるが,今後さらに慎重な経過観察が必要であると思われた。
  • 1986 年 24 巻 3 号 p. 529-618
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
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