抄録
大阪大学歯学部小児歯科において,昭和42年より60年までの19年間に行われた障害児の全身麻酔下歯科治療について,症例内容を調査し,それをもとに症例を昭和50年以前と55年以降の2つの時期に分けて比較検討したところ,次の結果を得た。
1)症例総数は105(男児76,女児29)であったが,昭和58年以降に症例数の増加が認められた。
2)患児の治療時年齢は,昭和50年以前では10歳以下が中心であったが,55年以降は11歳以上が大多数を占めた。
3)患児の障害の種類としては,昭和50年以前ではCP,MRの順に多かったが,55年以降ではCPは減少し,情緒障害が増加してきた。
4)昭和50年までは全ての症例が入院にて行われたが,55年以降では外来症例が過半数を占めた。
5)平均処置歯数は,昭和50年以前では10.6本,55年以降では7.1本であり,減少がみられた。
6)処置内容は,昭和50年以前では乳歯の処置が過半数を占め,抜歯,アマルガム修復が多かった。55年以降では処置の対象はほとんど永久歯であり,インレーおよび鋳造冠の形成,印象の頻度が最も高かった。
7)平均治療時間は,昭和50年以前では1時間50分,55年以降では2時間6分であり,やや延長してきている。
8)全身麻酔を複数回行って一口腔を計画的に治療した患児が,昭和55年以降に9名認められた。