抄録
東京小児療育病院,みどり愛育園において昭和55年2月より,全身麻酔下治療(以下「全麻」) , 外来治療( 以下「外来」) および年1 回の口腔内検診を行ってきた。そこで,両施設の小児の昭和59年までの5年間における治療状態などについて調査し,あわせて入院児の口腔内状態の変化を観察した。
1)処置者数は,「全麻」は減少から横ばい傾向に,「外来」では,増加傾向がみられた。
2)治療内容は,「全麻」で修復処置が多く,1人平均処置歯数は12.2歯であり,「外来」も,当初,抜歯が多いが,修復処置も増え,1人平均処置数も増加してきている。歯年齢別にみると,乳歯列では修復処置,混合歯列では交換期の抜歯も,また,永久歯列では修復処置および予防填塞処置が多かった。
3)歯髄・根管処置では,「全麻」では年々減少傾向を示しているが,「外来」では年々増加し,特に永久歯の抜髄および根管治療が増えてきている。
4)齲蝕罹患状況の変化では,両施設ともD(d)歯率の減少および齲蝕罹患者の減少がみられた。また,特に『みどり』ではF(f)歯率の著しい増加がみられた。
5)カリオスタットによる齲蝕活動性は,『東小児』で齲蝕活動の低いものが60%以上となるが,『みどり』では低いものが50%近く占めるが,逆に齲蝕活動性の高いものが30%近く占めていた。全体として,口腔内状態の改善傾向がうかがわれた。