抄録
本教室では,昭和47年本学附属病院小児歯科外来を訪れた小児の齲蝕罹患状態の実態調査を行い,その結果を報告した。今回,著者らは,その後10年以上を経過した現在の小児の齲蝕罹患状態を知る目的で,昭和59年5月から昭和60年11月までに本学を訪れた小児の乳歯ならびに第一大臼歯の齲蝕罹患状態を調査し,前回報告したものと比較検討を行った。
乳歯の齲蝕において,一人当りdef歯数およびdef歯率の年齢的推移を前回の調査と比較すると,特に2-3歳児において大きな減少が認められ,それ以降の年齢群でも減少傾向が認められた。また,一人当りdef歯面数およびdef歯面率でも類似した傾向が認められた。
各歯種別のdef歯率およびDMF歯率の年齢的推移をみると,低年齢児の上顎乳切歯および乳犬歯で著しい減少が認められた。これは,齲蝕の初発年齢の上昇を示唆するものと考えられた。乳臼歯では,前回と今回でその増齢的増加傾向に著しい変化は認められなかった。第一大臼歯においては,上下顎とも著明な変化は認められなかった。
歯種別歯面別df率を2歳児と4歳児について比較したところ,2歳児における上顎乳前歯の唇面齲蝕の減少が顕著であった。乳臼歯部では,4歳児において上下顎とも,咬合面齲蝕が減少しているのに対し,隣接面齲蝕は増加傾向を示した。第一大臼歯の歯面別DF率の年齢的推移を比較したものでは,各歯面の齲蝕罹患率に大きな変化の認められなかった。