小児歯科学雑誌
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歯の萌出・成長に関する実験的研究
第1報 軟X線切歯側方撮影法および微小移動距離連続記録法の開発とその実験条件の吟味
斉藤 峻
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1987 年 25 巻 1 号 p. 43-53

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抄録
歯の萌出機序の研究にあって,最も重視されるべきものは萌出速度の正確な測定方法を確立することである。従来の方法より測定精度の高い方法を開発した。即ち,軟X線切歯側方撮影法と微小移動距離連続記録法の2方法である。前者は彎曲しているラット切歯の側方からの計測を可能にすると共に,基準点の固定化を容易にした。後者はウサギ切歯の萌出速度の微小変化を経時的に連続記録することを可能とし,かつ,呼吸,心運動などの生体機能の変化も併せ考察し得る利点がある。本研究においては,これら新しく開発した2つの方法を適宜応用することによって,分単位から日単位までの萌出速度の測定が可能となった。
また,造歯組織細胞の増殖の反応性の指標として,片側下顎切歯を切断して(切断側),切断側の萌出速度と切断しない他方の下顎切歯(非切断側)の萌出速度の比を求めた。全身麻酔薬として用いた Pentobarbital sodium, Ketamine hydrochloride, Urethane のうち,前2者はいずれも萌出速度に対して影響を与えなかったが, Urethaneは著明に萌出速度を抑制した。このUrethaneによる萌出速度の抑制は,Urethaneの麻酔作用によるというよりも,麻酔作用量以下で発揮される増殖細胞に対する蛋白合成阻害作用によるものと思惟される。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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