小児歯科学雑誌
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口腔悪習癖に関する臨床心理学的アプローチ
第1報 拇指吸引癖消去の1例
木下 くみ子尾崎 正雄石井 香勝俣 真里尾上 圭子塚本 末廣本川 渉吉田 穣
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1987 年 25 巻 2 号 p. 445-453

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抄録
小児歯科臨床において,吸指癖が咬合誘導の障害となることは疑いない。特に学童期にいたるまでこれが続いているような小児では,親子関係,兄弟関係などを含む種々の複雑な心理的背景がからみあい,習癖からの脱却をより困難にさせている場合も多い。今回我々は,生後間もなく発現した拇指吸引癖が,6歳7カ月まで続いていた女児に対し習癖の心理的消去を試み,次のような知見を得た。
1.各種心理テストを行う事により,患児や両親の性格上の題点等を把握できた。これらのテストは,治療方針決定および母親への生活指導を行う上で有効な手段だと思われる。
2.患児にイメージ嫌悪療法を行う事によって,習癖をやめる動機づけを行う事ができ,さらに自己暗示によって,習癖中止のきっかけと,自分自身でやめたと言う自信を与える事が出来た。
3.この試みを始めて約1週間という短期間で,一応就寝時の拇指吸引癖の中止をみることができ,約1年の観察によっても,再発の徴候は認められていない。
4.従来より行われていた装置等による除去法よりも,今回行った心理療法による習癖消去法の方が,小児の健全な心身の成長,発達を支援するうえで効果的且つ有効であると思われた。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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