小児歯科学雑誌
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25 巻 , 2 号
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  • 篠田 圭司, 徐 成徳, 広瀬 永康, 山口 和史, 田村 康夫, 吉田 定宏
    1987 年 25 巻 2 号 p. 273-280
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    非接触型顎運動解析装置(サホンビジトレーナCII)を用いて乳歯列期小児の咀嚼運動路の再現性について検討を行った。
    被検児には顎口腔機能及び形態的にも異常を認めない乳歯列を有する小児4名(3歳11カ月~5歳3カ月)を用いた。
    計測はチューインガム咀嚼時の前額面投影を一週間間隔で3回にわたって行った。
    計測項目は習慣性咀嚼側及び反対側での下顎移動距離,側方偏位角度,さらに習慣側の咀嚼パターンをあらかじめ5タイプに分類し,同一被検児でそれぞれの出現頻度の観察を行った。
    その結果,開口量,側方移動量,側方偏位角については個人差が認められたが,すべての被検児で日間変動は小さく,再現性が認められた。
    側方移動量,側方偏位角については左右差が認められた。
    咀嚼パターンは3人の被検児に日間変動が認められたが,咀嚼パターン5タイプをさらに“グラインディングタイプ”と“チョッピングタイプ”の2タイプに分類した場合では1人の被検児を除き,日間の大きな変動は認められなかった。
    以上の結果より,本装置を乳歯列期小児に応用した場合も再現性が得られ,臨床的な応用も可能であることが示唆された。
  • 浜田 三郎, 木本 茂成, 浜田 作光, 葉山 淑人, 丹下 貴司, 檜垣 旺夫, 川瀬 俊夫, 斉藤 滋
    1987 年 25 巻 2 号 p. 281-293
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯胚の発生から萌出,さらに咀嚼へと歯の発育に関する研究は,小児歯科領域ばかりでなく歯科領域にとって近年,最も重要な課題の一つとして考えられている。特に,歯胚の中でも歯周組織を形成する歯小嚢に関する細胞生物学的手段による検索は必要と思われる。
    本研究は,歯小嚢の構成細胞の特徴を生化学的に究明するための手初めとして,ウシ歯小嚢のinnerおよびouterから組織片を発育別に採取し,細胞培養を試みた。さらに,カルシウム調節ホルモンのビタミンD3の細胞増殖効果についての検討を加えた。その結果,1)組織片からのoutgrowthにより細胞培養が可能であり,発育段階の初期のものほど,また初期ではinnerが,歯根形成時ではouterにおいて細胞の増殖率が高かった。
    2)outgrowthした細胞の形態は,細胞集団としては極めてヘテロであるが,培養日数につれ線維芽細胞が主体となった。
    3)さらに,これらの細胞を継代しても形態的変化は認められなかった。
    4)5×10-9M 1,25(OH)2D3により,各発育時期を通じ,inner,outer双方とも細胞増殖は抑制されたが,stage I ではinner,stage II およびIIIではouterで強い抑制効果が認められた。一方,5×10-8M 24,25(OH)2D3では抑制効果は認められなかった。
    従って,歯胚発育,なかでも歯周組織を形成する細胞群の発育に伴っての特徴をとらえられる細胞培養が可能となった。
  • 浜田 三郎
    1987 年 25 巻 2 号 p. 294-305
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯胚において,細胞の生化学的特徴を明らかにすることは歯胚の発育過程を知る上で重要と考えられる。そこで,ウシ歯小嚢および歯乳頭から得られた細胞のアルカリフォスファターゼ(ALPase)活性を指標としてその特徴について検索した。
    約2歳のウシ下顎前歯永久歯歯胚を3つのstageに分け,それぞれ歯小嚢と歯乳頭を採取し,37℃90分間のコラゲナーゼ処理を行った。遊離細胞に対しALPase活性の測定を行い,さらに反応速度論的解析,熱および阻害剤による効果について検索し以下の結果を得た。ただし,1 Unit は 50 nmole p-nitrophenol生成/15min/1×105 cellsとした。
    歯小嚢由来の細胞は高いALPase活性を示し,しかも歯胚のstageとともにI=44.3±1.9 Units,II=59.0±3.2 Units およびIII=67.6±4.9 Units と上昇した。一方,歯乳頭では各時期を通じ I=38,0±7.9 Units,II=38.8±11.4 Units およびIII=43.6±6.8Unitsと一定であった。Km値(pH10.15)は,歯小嚢においてIで2.86mM,IIおよびIIIで1.18mMであったが,歯乳頭ではstageを通じ2.00mMと一定であった。さらに,熱(56℃ 20分)およびL-HArgに対し顕著に阻害され,L-PheおよびL-Phe-Gly-Glyでは阻害効果は弱かった。したがって,ALPaseは歯胚の発育にとって興味あるmarker enzymeとなりうることが明らかとなった。
  • 福島 真弓, 森主 宜延, 甲斐 正子, 丸田 裕子, 濱崎 栄作, 中村 孝, 小椋 正
    1987 年 25 巻 2 号 p. 306-313
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    斑状歯は1955年以前,桜島においてみられた。そして斑状歯に関する多くの研究が報告された。1956年から水道水が整備され,それ以来斑状歯に関する追跡研究はされていない。
    この研究の目的は1955年以前,発表された斑状歯の頻度との比較により,水道水の整備の効果を明確にするとともに,斑状歯の状況を把握し,斑状歯の影響について検討することである。この調査は桜島在住の1,158人の保育園児ならびに学童を対象に行った。結果は次に示すとおりである。
    1)今回の調査において検出された歯の石灰化異常は,フッ素濃度と石灰化異常の程度ならびに重症度の関係に基づき斑状歯と断定した。
    2)桜島における斑状歯の頻度は10.7%であった。検出された斑状歯のすべては軽度(M1)であった。
    3)斑状歯は主に0.3ppm以上のフッ素濃度を含む水を摂水している子供たちに検出された。
    4)桜島における飲料水によるフッ素の齲蝕抑制効果は,この調査において明確にされなかった。
  • 森主 宜延, 大野 秀夫, 住 和代, 大野 和夫, 小椋 正
    1987 年 25 巻 2 号 p. 314-322
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は咬合の不正,顎顔面形態そして臨床所見から思春期における顎関節症の原因としての咬合の不正の役割を明らかにすることであった。
    対象は鹿児島大学歯学部附属病院小児歯科外来に来院した10歳から20歳までの顎関節症患者40名であった。研究用歯列模型,頭部X線正貌,側貌規格写真ならびに規格化された正貌写真の研究から次のような結果を得た。
    1)顎関節症患者は次の様な特徴的顎顔面形態を有していた。
    下顎枝ならびに体は対象群と比較し小さく,短かった。特にGonial Angleにおいて顎関節症群は対象群に比べ大きかった。
    2)顎関節症群の下顎の縮少は下後方であった。
    3)顎関節症群における歯と歯槽基底の不調和値と歯列不正度は対象群よりも高値を示した。この所見は顎関節症群における下顎の縮少によることが示唆された。
    4)上顎における歯と歯槽基底の不調和は対象群と比較した場合顎関節症群に存在しなかった。しかし上顎の歯列不正度は高く,この研究のすべての結果から,この所見は小さな下顎歯列に対して上顎歯列の順応による結果だろうことが推察された。
  • 秋澤 より子, 原 徳寿, 永井 正規
    1987 年 25 巻 2 号 p. 323-331
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    的確な齲蝕予防法を検討する目的で,保健所で行われた健康診査から,1歳6カ月と3歳時の資料(451人分)を用いて,菓子類,飲物の摂取と歯磨き実施とが3歳時の乳歯齲蝕にどのようにかかわっているかを観察し,以下の結果を得た。
    1)3歳時に菓子パン,ビスケット,アイスクリーム,ケーキ類,市販のジュース,チョコレート,乳酸飲料,炭酸飲料,スナック菓子,あめなどの菓子,飲物類を摂取するものは齲歯有病率が高い。
    2)1歳6カ月時の菓子類摂取では,あめの摂取が最も強く齲歯発生と関係していた。
    3)1歳6カ月と3歳の両時点の菓子摂取では,いずれかの時点であめ,チョコレート,ケーキを摂取していたものの齲歯有病率が高かった。
    4)歯磨きの実施時刻別に,歯磨き実施と齲歯発生との関係を注意深く観察したが,両者に明らかな関係はみられなかった。
    5)因子分析により歯磨き,菓子類,飲物の摂取と齲歯発生との係わりを総合的観察した結果,菓子類の摂取と齲歯発生とは明らかな相関がみられた。しかし,歯磨きと齲歯発生との関係を明らかにすることはできなかった。
  • 三條 治
    1987 年 25 巻 2 号 p. 332-344
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    唾液タンパク質の中には,ヒドロキシアパタイトに高い親和性をもつ成分が存在し,獲得被膜の形成,特にその初期過程に関与し,歯石の沈着,齲蝕の発生に関わっている可能性が高いと考えられる。そこでヒドロキシアパタイトに対して高い親和性をもつタンパク質成分を分離する目的でヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーにより顎舌下腺唾液タソパク質を分離し,これをCM-セルロースカラムクロマトグラフィーによって精製し,その生化学的性質,ならびにリン酸カルシウムの沈澱形成に及ぼす影響,唾液中の濃度の個体差と齲蝕罹患率との関係について調べ,次のような結果を得た。
    1.顎舌下腺唾液タンパク質のうちヒドロキシアパタイトにもっとも親和性の高い成分として3種の塩基性高ヒスチジンタンパク質分画を分離,CM-セルロースカラムクロマトグラフィーによりそのうちの主な2成分を精製することが出来た。これらのタンパク質は,その生化学的性質から獲得被膜の形成,とくにその初期過程に関与していると考えられた。
    2.今回分離した塩基性高ヒスチジンタンパク質は,過飽和な溶液からのリン酸カリシウム塩の沈澱形成を促進することから,歯石の形成に関わっている可能性が考えられる。
    3.28名の成人女性について調べたところ,DMFT指数と顎舌下腺唾液中の塩基性高ヒスチジンタンパク質濃度の間には相関は認められなかった。
  • 平井 志都子, 岡崎 雅子, 森主 宜延, 小椋 正
    1987 年 25 巻 2 号 p. 345-352
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    顎口腔系の成長発育と顎運動との関係を知る手がかりとして,顎口腔系に機能的異常のないHellmanの咬合発育段階IIAからIIICまでの48名の小児について,下顎切歯部における限界運動をサホンビジトレーナーModel 3を用いて記録し,咬合発育段階の進行に従う変化について検討した結果,以下の結論を得た。
    1.咬合発育段階の進行に従い,下顎運動は前方,側方,下方,ならびに後方への拡大が見られた。
    2.咬合発育段階の進行に従う側方咬合位の変化傾向は,左右対称的であった。
    3.咬合発育段階の進行に従い,前方及び側方滑走運動路は下方へ移行し,下に凸型を示す曲線を描くようになった。
  • 奥田 令以
    1987 年 25 巻 2 号 p. 353-366
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    酢酸および乳酸脱灰溶液中でアパタイト(HAp)結晶の脱灰過程を研究し,さらにこれら有機酸で部分脱灰したHApを種々の濃度のリン酸カルシウム溶液中で再石灰化させ,個々の結晶から見た再石灰化がどの様に進行するかを,F-の有無ならびに再石灰化溶液の飽和度を考慮して検討した。
    HApの脱灰量はpH4.0以下では酢酸中に比べ乳酸中の方が多かったが,脱灰部位は有機酸の種類に関係なくHAp結晶の基底面および柱面に見られた。
    再石灰化過程では,基底面からの寄与が大きく,特に再石灰化初期においては溶液の飽和度およびF-の有無に関係なく基底面から優先的に再石灰化していた。OCPが生成し得る溶液中では,10μM程度のF-が存在するとOCPの生成を抑制し再石灰化は遅延することが明らかとなった。このとき,新たに成長したHApもしくはFApは脱灰HAp表面に無配向に析出成長していた。これに反し、OCPが関与できない溶液中では,F-が存在すると再石灰は促進されていた。また,新たなHApもしくはFApは脱灰HApの基底面から析出し,その後もc軸に平行に再石灰化が進行していた。
    以上の結果により,飽和度の違いによって再石灰化過程が異なることが示唆され,歯質エナメル質の再石灰化部位の配向性を議論する上で溶液組成およびF-が極めて重要な役割を果していることが示唆された。
  • 松尾 ゆき子, 真柳 秀昭, 阿部 里美, 戸沢 加寿子, 門馬 祐子, 幸地 省子
    1987 年 25 巻 2 号 p. 367-377
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    東北大学歯学部附属病院口蓋裂診療班において,乳歯列期より咬合管理している唇顎口蓋裂児で,他に奇形を合併していない85名(男児49名,女児36名)を対象に,乳歯歯数と永久歯歯胚数の異常発現状況及び両者の関連性について,明確にすることを目的として調査を行った。その結果,
    1)唇顎口蓋裂児では歯数異常の発現率が乳歯30.6%,永久歯71.8%と,特に永久歯で顕著であった。
    2)上顎での歯数異常を種類別に見ると,乳歯では欠如14.1%,過剰10.6%,癒合1.2%,また永久歯では欠如64.7%,過剰5.9%を認めた。
    3)上顎での欠如の発現部位は,乳歯では唇顎裂・唇顎口蓋裂ともに前歯部に,口蓋裂では臼歯部にみられ,また永久歯では唇顎裂で前歯部,口蓋裂で臼歯部に,唇顎口蓋裂では前歯部と臼歯部の両方にみられ,裂型による発現の違いが認められた。
    4)歯数異常は乳歯ないしは永久歯のいずれかに単独に発現する例が多いが,顎破裂症例の患側では破裂の重症化に伴い,乳歯・永久歯の両方に異常を示すものが多くみられた。
    5)顎破裂の部位と異常発現の関係は,A▼BCが最も多く73.8%あり,A▼C 11.9%,AB▼B′8.3%で,AB▼Cは著しく少なく4.8%であった。
  • 細矢 由美子, 後藤 讓治
    1987 年 25 巻 2 号 p. 378-388
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    各種清掃研磨法による平滑面に対する清掃研磨効果について,SEMによる観察を行い,下記の結論を得た。
    1.歯面清掃研磨機の使用は,エナメル質の清掃研磨に大変優れており,特にProphy Jetの使用は,今回使用した各種清掃研磨法中,最良の清掃研磨効果を示した。しかしながら,歯面清掃研磨機Quick Jet使用例については,多くの症例で歯面が1層切削されたような像が観察された。
    2.ブラシコーンと清掃研磨材を併用した場合では,プロフィーペースト・レッドとプロフィーペースト・イエローが良好な結果を示した。しかしながら,浮石末泥使用後のエナメル質面には深いキズが多量に形成されたため,本材は歯面の清掃研磨材として用いるべきではない。同様に,ネオポリシングペースト,プロフィーペースト・ブルー及びプロフィーペースト・グリーンもエナメル質表面の清掃研磨材としては不適当であった。
    3.ブラシコーンもしくはポリシングブラシのみの使用では,清掃研磨後の歯面に有機性被膜などが残存する確立が高かった。
    4.10%次亜塩素酸ナトリウム30秒間塗布による清掃効果は,最も低かった。
  • 安福 美昭
    1987 年 25 巻 2 号 p. 389-394
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Streptococcus mutans C3603株(血清型c)が産生するバクテリオシン(ミュータシン)の齲蝕抑制効果を,S.mutans MT8148R株(血清型c)を感染させたラット実験齲蝕系を用いて検討した。
    その結果,飲料水中および飼料中に高濃度に添加した場合にのみ齲蝕抑制効果が見られた。しかし,その抑制効果は最小発育阻止濃度(MIC)の20-100倍の高い投与濃度でも著明ではなく,しかも飲料水中への添加は供試菌の定着,プラークの付着,あるいは齲蝕スコアに有意な変化を与えなかった。
  • 安福 美昭
    1987 年 25 巻 2 号 p. 395-403
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Streptococcus mutans C3603株(血清型c)が産生するバクテリオシン(ミュータシン)の齲蝕抑制効果を,ラット実験齲蝕系を用いて調べたところ,in vitroでの強力な抗菌作用から予期される程には顕著ではなかった。即ち,このミュータシンC3603の抗菌作用の発現が,ラット口腔内において何等かの機序で阻害されたと考えられた。そこでその原因を究明するため,in vitroにおいて種々の条件下でその抗菌作用を調べた。その結果,ミュータシンC3603は,スクロースを含まない培地で培養した指示菌(S.mutans)に対しては著明な抗菌作用を示すものの,スクロースを含む培地で培養した場合にはその作用が著明に阻害された。しかし,このミュータシンは,S.mutans が産生する菌体外多糖に対して特異的な吸着を示さなかった。一方,スクロースやグルコースの存在下で菌体外多糖を産生するStreptococcus mutansActinomyces viscosusはこのミュータシンに対して,S.mutans の場合と同様に,菌体外多糖の産生による耐性を示した。そこで,スクロースとデキストラナーゼとを同時に添加した培地で培養したS.mutansを指示菌としたときには,グルコース培養した場合と同様の強い抗菌作用が認められた。以上の結果は,スクロースから産生される菌体外多糖がS.mutans菌体表面を覆うことによってミュータシンが菌体表面に到達できず,その結果,その抗菌作用の発現が阻害されたものと考察された。
  • 徐 成徳
    1987 年 25 巻 2 号 p. 404-419
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児歯科臨床上頻繁に遭遇するエナメル質白斑(表層下脱灰)は,切削充填することなく人為的に再石灰化を促進し,表層下脱灰歯質をもとの状態に回復することが望まれている。
    そこで,白斑部の再石灰化を促進させるために微量なフッ素を含有させた歯質接着性コーティング剤を新しく試作した。このコーティング剤は,エタノールを溶媒とした適度な親水性を有するポリメタアクリル酸エステルの共重合体を基剤としており,エナメル質に接着性を示し,再石灰化溶液内で持続的に微量なフッ素イオンを溶出するものである。
    本実験では,コーティング剤の白斑部に対する効果を検討するため,定性及び定量的な基礎実験と臨床試験を行った。
    その結果,基礎実験から10ppm F-含有コーティング剤を適用することにより,白斑部にフッ素化アパタイトを生成し,この部の結晶性と耐酸性の向上が認められた。臨床試験においても,10 ppm F-含有コーティング剤の白斑部改善効果が有意に認められた。
    以上の結果から,10 ppm F-含有コーティング剤は,白斑部に対して齲蝕進行抑制と再石灰化促進効果を有する有望な薬剤であることが認められた。
  • 三好 憲裕, 中山 弘, 池上 信行, 高橋 利近, 西嶋 克巳
    1987 年 25 巻 2 号 p. 420-424
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯冠が正常の萌出方向とまったく逆の方向へむかっているのを逆生歯といい,歯冠が完全に萌出している場合と未萌出で粘膜下にある場合がある。一般的に,鼻腔内に最も多いのは過剰歯であり,形態としては,犬歯状,初診時の年齢は10歳代,症状としては,ほとんど無症状であり,鼻腔へ萌出すると鼻閉,悪臭性鼻漏,鼻出血などがみられることがあるといわれている。また原因として外傷,梅毒,奇形などがある。
    今回,われわれが経験した1例と過去当教室で経験した4例,また,われわれが渉猟した7例を比較検討してみた。比較検討方法として,患者については年齢と性別,歯については種別,形態と未萌出歯の有無,その他原因についても検討してみた。
    われわれの経験した5例中4例が唇顎口蓋裂を伴っていた。また,男女比は2:3,歯の種別として,過剰歯3例,正常歯2例,歯の形態として犬歯状2例,前歯および前歯状3例であった。過去,われわれが渉猟した7例と当教室で経験した5例を比較して,一般に原因といわれているうちの唇顎口蓋裂が特に多いことと,前歯および前歯状が多い他はほぼ同様の所見であった。
  • 大野 和夫, 森主 宜延, 大野 秀夫
    1987 年 25 巻 2 号 p. 425-435
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Diphenyl hydantoin 性歯肉肥大症を有する障害児に対して,全身麻酔下における歯科治療方針立案に関して検討した結果以下の知見を得た。
    1.基礎疾患については,症例1:精神発達遅滞,情動障害,てんかん。症例2:精神発達遅滞,貧血状態,てんかん。症例3:精神発達遅滞,脳性麻痺,全身衰弱,てんかんであった。
    2.症例1については,患児ならびに保護者によるプラークコントロールが可能と考え全顎にわたる歯肉切除を行った。しかし,術後の保護者によるプラークコントロールが主な原因と考える円形脱毛症を生じたため保護者によるプラークコントロールを中断したところDiphenyl hydantoin性歯肉肥大症が再発した。
    3.症例2,3については,術後のプラークコントロールが望めないと考え,歯科医療の原則である歯牙を保存するという考えをあえて捨て,歯周組織に対する処置を行わず抜歯とした。
    4.以上のことより障害児に於けるDiphenyl hidantoin性歯肉肥大症の歯科治療方針の決定には歯科医師側の医療技術よりプラークコントロールのような患児ならびに患児を助けるパラデンタルスタッフの役割遂行の可能性に治療方針を決定すべき重要な因子が存在すると考えられた。
  • 藤井 ますみ, 小出 武, 河原 茂, 奥村 喜与子, 南郷谷 修, 奥田 正計, 稗田 豊治
    1987 年 25 巻 2 号 p. 436-444
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    10p-症候群とは第10常染色体の欠失によって全身に種々の障害をもたらす症候群で,頭蓋・顔面部も強く影響を受けていることから,本症候群児を歯科的に検討することは意義あるものと考えられる。
    私たちは染色体検査によって,第10常染色体の短腕欠失と性染色体に異常の認められた患児に遭遇し,歯科的な検討を加える機会を得たので報告する。
    患者:男児,4歳6カ月。
    初診:昭和61年1月9日。
    主訴:齲蝕。
    家族歴:父母は健全で,同胞の男児には異常は認められない。
    既往歴:先天性の肺静脈還流異常があり,てんかん発作を2回経験している。染色体検査の結果,47XXY,del,(10)(P14→Pter)/47XXYのモザイクと診断され,第10常染色体の欠失の割合は80%であることが判明した。
    頭蓋・顔面所見:頭部左側の発育不全が認められ,左眼は盲,右眼は近視および乱視で両眼とも逆蒙古様眼裂を示し,鼻背は低い。
    口腔内所見:いずれの乳歯の近遠心的幅径も正常より大きな値を示しており,形態的にはClCの基底結節がいずれも遠心方向に強く偏位している。また,DBA|ABDの辺縁隆線が著明に発達している。X線写真所見から,乳歯根の形態異常は認められないが,2|2の歯胚の欠如を認めた。
  • 木下 くみ子, 尾崎 正雄, 石井 香, 勝俣 真里, 尾上 圭子, 塚本 末廣, 本川 渉, 吉田 穣
    1987 年 25 巻 2 号 p. 445-453
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児歯科臨床において,吸指癖が咬合誘導の障害となることは疑いない。特に学童期にいたるまでこれが続いているような小児では,親子関係,兄弟関係などを含む種々の複雑な心理的背景がからみあい,習癖からの脱却をより困難にさせている場合も多い。今回我々は,生後間もなく発現した拇指吸引癖が,6歳7カ月まで続いていた女児に対し習癖の心理的消去を試み,次のような知見を得た。
    1.各種心理テストを行う事により,患児や両親の性格上の題点等を把握できた。これらのテストは,治療方針決定および母親への生活指導を行う上で有効な手段だと思われる。
    2.患児にイメージ嫌悪療法を行う事によって,習癖をやめる動機づけを行う事ができ,さらに自己暗示によって,習癖中止のきっかけと,自分自身でやめたと言う自信を与える事が出来た。
    3.この試みを始めて約1週間という短期間で,一応就寝時の拇指吸引癖の中止をみることができ,約1年の観察によっても,再発の徴候は認められていない。
    4.従来より行われていた装置等による除去法よりも,今回行った心理療法による習癖消去法の方が,小児の健全な心身の成長,発達を支援するうえで効果的且つ有効であると思われた。
  • 久芳 陽一, 加藤 洋治, 本川 渉, 吉田 穣
    1987 年 25 巻 2 号 p. 454-462
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    我々は,11歳男児の上顎右側第2小臼歯部に逆生埋伏という珍しい症例を経験した。
    初診時のレントゲン所見,あるいは抜去後の解剖組織学的所見などから上顎第2小臼歯である事が確認された。
    患児には家族歴,既往歴および全身発育状態などに,特記すべき異常は認められなかった。
    また,発生原因および経過に関する詳細も不明な点が多かったが,歯牙が発生当初から位置異常をきたしたのではないかと思われた。
  • 登内 喜美江, 河野 美砂子, 木暮 エリ, 富沢 美恵子, 野田 忠
    1987 年 25 巻 2 号 p. 463-476
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    マルファン症候群は,結合組織代謝異常により,骨格系(蜘蛛状指),眼(水晶体脱臼),心・血管系(解離性大動脈瘤)に特微ある症候を呈する疾患である。著者らは,新潟大学歯学部附属病院小児歯科外来で,齲蝕治療と口腔内診査を主訴として来院したMarfan症候群を有する5歳の男児を観察する機会を得,歯科的検討を加え,次のような所見を認めたので報告する。
    患者は高身長など身体の発育異常,漏斗胸,側彎症,蜘蛛状指などを認めた。顔貌は老人様を呈し,左右非対称であった。X線所見では長径頭蓋,下顎骨の前方転位,〓部の突出がみられた。
    口腔内所見として齲歯多数,高口蓋,不正咬合を認めたが,歯胚の欠如や萌出遅延はなかった。
    抜去乳歯の組織学的観察では,髄角部象牙質に球間区,歯根部では象牙細管の数の減少や走行の乱れ,歯髄腔内の象牙質粒の散在,また,根分岐部には血管を封入した第2セメント質の過形成などが認められた。石灰化の程度を検索した結果では,健全歯のものと比べ差は認められなかった。
  • 山本 益枝, 中島 正人, 三宅 雄次郎, 信家 弘士, 秋山 育也, 三浦 一生, 長坂 信夫
    1987 年 25 巻 2 号 p. 477-487
    発行日: 1987/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯が外傷を受けた場合,その後継永久歯に現れる発育障害については,臨床的疫学的,実験的報告が数多くなされている。我々は,本学小児歯科を受診した8歳10カ月の男児の上顎右側前歯部に歯冠形態異常を認めた。患児は,1歳6カ月頃,上顎右側乳中切歯が打撲により陥入し,即日抜歯処置を受けている。4歳7カ月の時,急性リンパ性白血病(A.L.L.)を発病したが,歯牙の障害は,上顎右側前歯部に限局しているため,乳歯外傷に起因するものと考えた。
    上顎右側中切歯は,歯頸側1/2はエナメル質に被覆されているが,切端側1/2は遠心隅角部にエナメル質を認めるだけで黄白色の象牙質が露出しており,探針により擦過痛を認めた。X線所見でも同部位のエナメル質欠如が認められるため,エナメル質形成不全歯と診断した。
    上顎右側側切歯は,歯冠中央から切端側にかけて黄色を帯びた硬組織が歯冠周囲をとりまいていた。硬組織の表面は粗造感があり,その中に周囲よりもやや白く光沢のある部位が,散在していた。審美性の回復のため削除した硬組織を病理組織学的検索をすると,主体は不規則な細管走向を示す象牙質であることが判明した。島状のエナメル質も認められ,一部セメント質の存在を疑わせる所見も認められた。以上の所見から側切歯の歯冠形態異常は,Andreasenらの言うオドントーマ様異形成歯に該当するのではないかと考えた。
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