小児歯科学雑誌
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性染色体の異常を伴う10P-症候群の一例とその歯科的所見
藤井 ますみ小出 武河原 茂奥村 喜与子南郷谷 修奥田 正計稗田 豊治
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1987 年 25 巻 2 号 p. 436-444

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抄録

10p-症候群とは第10常染色体の欠失によって全身に種々の障害をもたらす症候群で,頭蓋・顔面部も強く影響を受けていることから,本症候群児を歯科的に検討することは意義あるものと考えられる。
私たちは染色体検査によって,第10常染色体の短腕欠失と性染色体に異常の認められた患児に遭遇し,歯科的な検討を加える機会を得たので報告する。
患者:男児,4歳6カ月。
初診:昭和61年1月9日。
主訴:齲蝕。
家族歴:父母は健全で,同胞の男児には異常は認められない。
既往歴:先天性の肺静脈還流異常があり,てんかん発作を2回経験している。染色体検査の結果,47XXY,del,(10)(P14→Pter)/47XXYのモザイクと診断され,第10常染色体の欠失の割合は80%であることが判明した。
頭蓋・顔面所見:頭部左側の発育不全が認められ,左眼は盲,右眼は近視および乱視で両眼とも逆蒙古様眼裂を示し,鼻背は低い。
口腔内所見:いずれの乳歯の近遠心的幅径も正常より大きな値を示しており,形態的にはClCの基底結節がいずれも遠心方向に強く偏位している。また,DBA|ABDの辺縁隆線が著明に発達している。X線写真所見から,乳歯根の形態異常は認められないが,2|2の歯胚の欠如を認めた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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