抄録
我々は,下顎左側第2乳臼歯が完全に埋伏している3歳7ヵ月の男児の症例を経験し,これに咬合誘導処置を施した.
本症例のX線写真所見では下顎左側第2乳臼歯の埋伏とその歯冠部を取り囲む境界明瞭なX線透過像が認められたが,その後継永久歯であるべき下顎左側第2小臼歯の歯胚は欠損していた. なお全身的及び歯科的に下顎左側第2 乳臼歯の埋伏に関連すると思われる既往は認められず埋伏の原因は判然としなかった.
処置として,当該部歯肉を開窓し,ダイレクトボンディングシステムにより患歯にフックを装着した.これと上顎に装着した舌側弧線の固定歯上顎左側第2乳臼歯の頬面に装着したフック間にパワーチェーンを用いて埋伏下顎左側第2乳臼歯の牽引誘導を行い,咬合平面に向け患歯を誘導した.