小児歯科学雑誌
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小児と成人における咬筋の stretch reflex と抑制時間に関する研究
馬場 弘
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1987 年 25 巻 4 号 p. 779-801

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抄録

本研究は小児における神経一筋の成長発育を検討する目的で,咀嚼筋反射の一つである咬筋 stretch reflex とそれに続くsilent period について観察した。さらに筋収縮力の変化に伴いSPがどのような影響を受けるかについても検討した。
被検者は咬合および顎機能に特に異常を認めなかった小児10名(CN群:平均6歳2カ月)と,同じく成人10名(AN群:平均21.1歳)および強く咬みしめると痛みを感じるなどの異和感を訴えた低咬合力成人5名(AS群:平均27.5歳)の計25名を用いた.下顎タップは, 1 ) 下顎安静時, 2 ) クレンチング時( 1 0 % , 5 0 % および最大クレンチング,ただし小児は10%を除く)および,3)バイティング(咬合力計咬合)時(5kg,10kg および最大咬合時)の条件下で一定の強さで行い,左右咬筋より双極表面電極で筋活動を導出した。
その結果,(1)La は3群とも安静時が長く,CN群とAN,AS群を比較した場合CN群の方が短い潜時を示す傾向が認められた。(2)クレンチング時,バイティング時とも筋活動量が増加するとSPDは有意に短縮した。この傾向はCN群とAN群で特に著しく,AS群では明瞭な短縮は認められなかった。(3)SPDにおける群間の比較では,CN群およびA S 群とA N 群でいずれの検査項目ともA N 群の方が短いS P D を示し, またC N群とAS群との比較では最大咬合時においてCN群の方が短いSPDを示していた。
以上の結果より,咀嚼筋の成長発育もSPDに影響を及ぼすことが強く示唆され,またSPDは筋活動量と強く関係することが明らかとなった。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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