抄録
萌出性腐骨(eruption sequestrum)の1症例について,その病理組織所見を報告する.患児は6歳の男子で,萌出中の下顎左側第一大臼歯の咬合面上に,歯肉と線維性に結合した硬組織小片がみられた.この硬組織小片はレントゲン的には淡い骨様不透過像を呈した.病理組織学的には壊死に陥った皮質骨からなり,種々の程度の吸収像をみるとともに,骨吸収面にはヘマトキシリンに濃染する細菌が多数集積していた.骨組織に接する歯肉には慢性炎症性変化がみられた.萌出性腐骨は病的意義には乏しいものの,ときとして歯肉炎や歯冠周囲炎を惹起することがあるものと考えられた.