抄録
Silver-Russell症候群は, 満期産の低体重と低身長, 身体の非対称性, 性発育異常を主症状とする原発性の小人症で,頭蓋・顔面部にも異常がみられることから,本症候群児の顎・顔面および口腔領域の特徴を歯科的に検討することは, 意義あるものと考えられる.
頭蓋・顔面部に認められる特徴として,偽水頭症,逆三角形の顔貌,小下顎症,への字様の口および高口蓋などが報告されている.私たちは,Silver-Russell症候群の1例を観察する機会を得たので,主として歯科的所見について,その概要を報告する.
症例は4歳1カ月の女児で,齲蝕処置を主訴として来院したものである.
在胎期間40週,出生時体重2346g,身長48cmの低出生体重児であった.
妊娠期間中の異常はなく,両親および姉は健全で,家系中に遺伝性疾患を有するものはない.
頭蓋・顔面所見としては,前額部が大きく,逆三角形の顔貌を呈し,耳介低位が認められた.また,口腔内所見としては,歯冠近遠心幅径は,いずれの乳歯も標準値より小さく,歯髄腔は大きく,特に,乳犬歯・乳臼歯で著明であった.上下顎歯列弓も長径,幅径とも標準値より小さかった.歯列弓の形態は,上顎では,左右の非対称性はみられなかったが,下顎では,左側の歯列弓長径が右側に比べて少し長かった.