小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
先天性小舌症の1症例
鍋島 耕二石川 隆義三浦 一生長坂 信夫
著者情報
キーワード: 先天性奇形, , 小舌症
ジャーナル フリー

1988 年 26 巻 2 号 p. 415-422

詳細
抄録
舌の先天異常としては,舌癒着症,葉状舌,巨舌症,小舌症,無舌症などがある.そのうちの小舌症,無舌症はきわめて稀な疾患である.
我々は,本学小児歯科外来を訪れた8歳5カ月の男児の小舌症に遭遇し,次の所見を得た.
1.患児に,小舌症,下顎前歯部の先天性欠損,上下顎の劣成長,高口蓋,口蓋粘膜下破裂を認めた.また,先天性心室中隔欠損症の既往があった.
2.舌は口腔底のほぼ中央部に位置し,舌根部に異常はないが,舌体は長さ約2cm,幅約1cmで舌尖に向かって狭いV字状の形態を示した.
3.舌の運動,嚥下運動,味覚の異常は認めなかった.また発音は,舌背が軟口蓋に接触してできる「キ」「ギ」「ケ」「ゲ」などの破裂音に歪を認めたが,他の構音障害は軽度で日常会話はかなり明瞭であった.
4.妊娠2カ月時の風疹ウイルスによる子宮内感染が原因の1つとして考えられた.
5.今後,小舌症自体の手術等による処置は不可能と考えられるが歯列,歯周組織を含めた総合的な口腔管理の必要性があると思われた.
著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事
feedback
Top