小児歯科学雑誌
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齲蝕に罹患した第2乳臼歯の埋伏ならびに当該歯摘出後に第1大臼歯の遠心移動を行った1症例
門馬 祐子真柳 秀昭
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キーワード: 埋伏乳歯, 遠心移動
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1988 年 26 巻 2 号 p. 406-414

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抄録

著者らは,齲蝕を伴った下顎左側第2乳臼歯の埋伏とその後継永久歯歯胚の位置異常を示した4歳6カ月の女児の症例に遭遇した.
既往歴,家族歴には特記すべき事項はない.乳歯は下顎左側第2乳臼歯を除いて総て萌出しており,且つ齲蝕に罹患していた.埋伏を示す下顎左側第2乳臼歯部の歯肉には発赤腫脹が認められた.
X線写真では,下顎左側第2乳臼歯は骨に囲まれ,咬合面の近心半側に齲蝕様の透過像が認められた.また,下顎左側第2小臼歯の歯胚は第2乳臼歯と第1大臼歯の間に認められた.
処置として,下顎左側第2乳臼歯の摘出を行った.当該歯の咬合面1/2に広範な実質欠損が存在した.他の乳歯の齲蝕治療中,下顎左側第1大臼歯が近心に傾斜して萌出し,第2乳臼歯部の空隙の喪失が生じたので,スプリットベース式のbilateral space regainerをもちいて,第1大臼歯の遠心移動を行った.
埋伏の原因は不明であるが,齲蝕罹患の原因については,口腔内が不潔で齲蝕が多発していたことから,歯周ポケットからの感染が疑われる.尚,下顎左側第2小臼歯は第2乳臼歯が埋伏したため本来の位置に移動できずに位置異常を起こしたものと考えられる.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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